「なぜ」の思いは、この日も届かなかった。尼崎JR脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫前社長(68)を無罪とした神戸地裁判決。神戸地検は4日、控訴を見送った理由を遺族や負傷者らに伝えた。「一審判決を覆す材料がない」。繰り返す次席検事に、遺族らは怒号や涙で悔しさをぶつけた。
「不満は残るが、控訴を断念するという結論に達した」。冒頭、小尾仁次席検事が淡々と述べた。時間にして10分ほど。続いて、遺族らから一気に不満があふれ出た。
説明会は約3時間に及び、出席者によると約40人のうち7割が発言したといい、「負けると分かっていたらけんかはしないのか」「有罪にできると言っていた自信はどこへいったのか」などの声が上がった。
「厳しいご指摘です」「期待に添えず申し訳ありません」と小尾次席。時折おわびの言葉を添えながらも「一審を覆すだけの証拠がない」などと繰り返し、「負けたと言われても仕方がない」と述べたという。
次女が負傷した三井ハルコさん(55)=川西市=は途中で退席し、「日本の現行法はあまりに無力だと感じた。無念です」と声を絞った。
1月11日の無罪判決後、神戸地検に控訴を要望した遺族も出席。事故で妻を亡くした山本武さん(62)=西宮市=は公判担当の検事に「声が聞きたい」と発言を求めたが、次席に「地検の判断なので」と遮られたといい、「彼(公判担当検事)は精いっぱいやってくれたし、私たちと同じ気持ちのはず。言いたくても言えなかったことがあるのだろう」と思いやった。
説明会の後、出席者たちは記者会見の場に臨んだ。長女が犠牲になった藤崎光子さん(72)は「『覆せない』の一点張りで納得できなかった。何のための裁判だったか」と語った。
(宮本万里子、足立聡、広畑千春)
【特集】尼崎JR脱線事故
(2012/02/05)
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