2001年7月に11人が死亡した明石歩道橋事故で、検察審査会の議決により、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元明石署副署長榊和晄(さかき かずあき)被告(64)の初公判が19日、神戸地裁(奥田哲也裁判長)で開かれた。榊被告は起訴内容について「私としてはできることはやっており、過失はなかった」と述べ、無罪を主張した。
改正検察審査会法に基づく全国初の強制起訴で、公判は小沢一郎・民主党元代表の陸山会事件、沖縄県の未公開株詐欺事件に続いて3例目。公判では事故当日、現場にいなかった榊被告が事故の危険性を認識できたかどうかが争われる。
榊被告は罪状認否で、まず遺族に謝罪し、「当時の私の立場を考えると(有罪が確定した)元地域官との共謀はなく、警備計画を策定する立場になかった」と起訴内容を否認した。弁護側は「検察審査会の起訴議決内容は権限を逸脱している」として公訴棄却を訴えた上で、当時の同罪の公訴時効(5年)を過ぎていることから「時効が成立している」と免訴(裁判打ち切り)を求めた。
続いて、検察官役の指定弁護士が冒頭陳述。歩道橋の構造▽前年のカウントダウンイベント▽当日の署内に設置されたテレビモニターや無線‐などから、「歩道橋内で参集者が密集・滞留し、雑踏事故が起こることは容易に予見できた」と指摘した。
また元地域官らの裁判では問われなかった警備計画段階の過失についても言及した。「計画段階で歩道橋を警備要点に設定し、迂回(うかい)路への誘導や群衆を分断することを署員に周知徹底すべきで、その権限もあった」と主張した。
その上で元地域官との共犯関係について、「元地域官の不注意を是正する立場にあったのに十分に果たさず、それぞれの不注意を互いに助長させた」と述べた。
指定弁護士の冒頭陳述に続き、弁護側が冒頭陳述を行う。
公判では、7遺族8人が、被告人質問や意見陳述できる被害者参加制度を利用。遺族4人が指定弁護士の後ろに座り、榊被告の表情を見つめた。
公判は指定弁護士側、弁護側合わせて元署員ら16人の証人が出廷する予定で、年内に結審し、来年にも判決が言い渡される見通し。
<< 起訴状骨子 >>
▽本位的訴因(当日の過失)
被告は2001年7月21日の明石市民夏まつりで、明石署警備本部副本部長として元地域官とともに事故を未然に防止すべき注意義務があった。歩道橋には多数の参集者が滞留していたことから、雑踏事故が発生する危険を容易に予見できたにもかかわらず、漫然と放置した過失の共同または競合によって、群衆なだれを発生させ、183人を負傷させ、11人を死亡させた。
▽予備的訴因(計画段階の過失)
前年のカウントダウンイベントなどから事故は予見でき、警備計画策定段階で地域官と共同して、事故を防止する体制を構築すべき注意義務があったが、漫然と放置した。
【強制起訴】 2009年5月施行の改正検察審査会法で検察審査会の議決に法的拘束力を持たせた。無作為で選ばれた市民11人による検察審査会が2度、「起訴すべき」と議決すれば強制的に起訴される。検察官の代わりに、起訴し、公判を担当するのは、裁判所が指定した弁護士(指定弁護士)。尼崎JR脱線事故や小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体をめぐる収支報告書虚偽記入事件など、これまで4件が起訴されている。
【明石歩道橋事故】 2001年7月21日夜、明石市のJR朝霧駅近くの歩道橋で、花火大会の見物客11人が死亡、247人が負傷した。兵庫県警は業務上過失致死傷容疑で、明石署、警備会社、明石市の当時の担当者ら計12人を書類送検した。元同署地域官と警備会社の元責任者は実刑が確定。元副署長は不起訴とされたが遺族が検察審査会に申し立て、審査会が起訴すべきと議決。10年4月、改正検察審査会法に基づき全国で初めて強制起訴された。
【特集】明石歩道橋事故
(2012/01/19)
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