(掲載日:2002/08/18)
知を集め市民に還元
 医療産業都市構想が動き出した。世界中から研究者が集まり、再生医療など最先端の研究に挑む。はたして、二十一世紀の都市を引っ張る力になるのだろうか。「神戸だからできる」。神戸商工会議所副会頭でシスメックス社長の家次恒さんは言う。私たちの周りにある潜在資源が、新時代の「知」を輝かせるという。(足立 聡)
目指すのはアジアのメディカルセンター。神戸ならやれる。

 「目指すはアジアのメディカルセンターですな。医療は知識集約型で波及効果も大きい。日々、発展、進歩している。だから可能性がある。それと、『あそこへいけば元気になれる』という視点も要る。先端の研究をどう市民につなぐか、ですね」

「これからの時代はええところをどれだけ伸ばせるかですよ」。人や街を見る目は常にプラス思考だ=神戸市中央区脇浜海岸通一のシスメックス本社前(撮影・幾野慶子)

 銀行マンだったが、女婿として入社した。血球計数装置、血液凝固検査装置で世界屈指のメーカーに育て上げた。海外の医療現場にも詳しい。

 「必要なのは研究と臨床をつなぐ専門病院。総合病院中心の日本と違って、米国は専門病院が集積している。病院の役割は病気を治し、医療の進歩に貢献することでしょ。専門病院は研究を重ね、成果を患者さんに施す。『神戸はレベルが高い』となると、世界中から研究者は集まるし、患者さんやご家族も来られるのです」

 とはいえ、何か難しいイメージがある。

 「高度な機械や薬を作らないかん、というだけやなくて、関連分野は幅広い。介護などのケアは労働集約的で雇用に結びつくし、患者さんの満足度も上がる。入院は日本ではペナルティーみたいな感覚でしょ。家では家族がきめ細かく尽くしてくれるのに、入院すると一変する。宿泊、食事、プライバシー…。ホスピタリティーを高めるとなると、チャレンジできる会社はいっぱいあるはず。人を中心に考えるんです。どれだけ多くの人に来てもらうか。神戸には港町ならではの多様性を認め合う風土がある。海と山はきれいだし。この個性はどこにもまねできないのと違いますか」

 中小企業の現場からは「自分たちには関係ない」という声もある。

 「医療にはテクノロジーが必要でね、医師からニーズを聞けば、メーカーは形にしようと考える。しかも、新製品ができたら世界に広まる可能性もある。ただ、すべてが今と一緒のままでうまくいくことはないよ。臨床でも手術でも、それぞれの場に行けば何らかの情報発信はある。座って待っていてはダメ。情報を取り入れ、起業化をめざす。歩み寄る姿勢が大切なのです」

 都市間競争の時代。企業誘致でもグローバルな戦いが強いられる。神戸に勝機はあるのか。

 「構想は神戸市の志であるべき。目先にとらわれず、どういう絵をかくか。本当にやるならポーアイ全部いるほど。理化学研究所が来た、国からお金も出た。このツキをどう生かすか。西播磨のスプリング8も使って、あらゆる資源をつなげる。二十一世紀型産業は知の集積があってこそ。米国は世界中の頭脳を集めている。ほな、神戸にも集めましょうよ。国内で東京と太刀打ちするんやったら、何か特徴を持つしかないんです。どうせ日本は島国。外との関係がない限り、生きていかれへんのだから」

 いえつぐ・ひさし 1949年、大阪市生まれ。京大経済学部卒。73年、三和銀行(現UFJ銀行)入行。86年、東亞医用電子(現シスメックス)入社。常務、専務を経て96年6月から社長。2001年11月から神戸商工会議所副会頭。目指すは「グローバル・ニッチ(すき間)・カンパニーとして業界のフロントランナーになること」。
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