再生医療の展開に光
2005/02/07

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)が世界に先駆け、マウスの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から大脳前駆細胞をつくる方法を確立した。大脳にかかわる病気のメカニズムの解明や治療への貢献が見込まれる一方、試験管内にあらゆる細胞をつくることができる生命科学の進歩には、人体改造などにつながる倫理的な問題も指摘されている。

 中枢神経は大脳、脳幹、脊髄(せきずい)に大別され、大脳の細胞だけはつくる方法が確立されていなかった。同センターの笹井芳樹グループディレクターは「今回の発見で、中枢神経の細胞は一通りつくれる道筋が付いた」と話す。

 ES細胞を使った細胞再生では、特定の細胞が機能を失って起こる病気について、その細胞を試験管でつくって移植する治療の研究が進んでいる。パーキンソン病ではサルを使った実験で効果が確認され、脊髄損傷や糖尿病などでも方法が模索されている。

 今回の成果はこうした再生医療の展開の幅を広げるだけでなく、病気そのものの研究や新薬開発にもつながる。例えばアルツハイマー病の初期症状を示しているマイネルト基底核細胞をつくり、試験管内で病変を解明したり、さまざまな治療法を試すことができる。

 一方、大脳は人間の「知」そのものといえるため、研究の進展には倫理面での問題もある。記憶や思考、運動にかかわる細胞を無限につくることは、人体改造や思考操作などにもつながる危うさも指摘される。

 加藤尚武・鳥取環境大学長(倫理学)は「現時点では医療面での期待の方が大きいと考えるが、今後の進展の段階ごとに、社会全体で倫理を考えていくべき」と話す。

 脳科学者の茂木健一郎さんは「基礎科学上、非常に意義深い成果。ただ、医療などへの応用には技術的な障害と倫理的な難問がある。脳のような複雑な臓器を、人間の『望ましい』方向にコントロールすることは、予想外の結果を生むこともあり、慎重でなければならない」と指摘している。

 ヒトES細胞をめぐっては、国は「ヒトES細胞の樹立および使用に関する指針」で基礎研究に限って認め、各研究機関は文部科学大臣に研究計画の確認を受けるよう定めている。(森本尚樹)

・特集「医療産業都市

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