国産初のヒトES細胞、10月にも研究機関へ分配
2003/05/28

 神経や臓器などの多様な細胞に成長する能力を秘めたヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)づくりに取り組んできた京都大再生医科学研究所は二十七日、国産初のES細胞ができた、と発表した。早ければ十月にも全国の研究機関に無償で分配できる見通し。

 ヒトES細胞は一九九八年に米国で初めてつくられ、スウェーデンやオーストラリア、韓国などでも自前の細胞で研究を進めているが、日本はこれまで輸入するしかなかった。国産化により、臓器や組織を修復する再生医療の研究が急速に進むとみられる。

 同研究所によると、ES細胞は受精卵の分割過程の「胚盤胞」と呼ばれる段階で、一部の細胞を取り出し、培養するなどして作成する。

 同研究所は今年一月、不妊治療を受けていた夫婦から治療に使用しなかった約十個の凍結受精卵の提供を受け細胞づくりを開始。胚盤胞まで育ったのは一個だけだったが、そこから増殖させた。

 作成した細胞が神経や色素細胞に分化したことなどから、ES細胞と確認した。染色体にも異常はなかった。

 この細胞だけではゲノム(全遺伝情報)が一種類になり、増殖能力を失うと供給が途絶える恐れがあるため、今後新たに受精卵の提供を受け、三・五種類を作成する。

 分配を希望する施設は倫理委員会で承認された計画書を文部科学省に提出。動物での研究実績などを基に、ヒト細胞を使う体制と必要性が審査される。

 文科省がES細胞づくりを認めているのは京都大だけ。ES細胞作成用の受精卵の提供施設としては京都大と慶応大、豊橋市民病院(愛知県)が承認されているが、使用した受精卵の提供施設は明らかにしない。

 計画の責任者の中辻憲夫同研究所長は「受精卵の提供者の協力とこれまでの研究の積み重ねがあって、順調に作成できた」と話している。

<ヒト胚性幹細胞(ES細胞)>

 多様な細胞に成長する能力があり「万能細胞」とも呼ばれる。受精後5・7日の「胚盤胞」の段階で細胞の一部を培養するなどしてつくる。分化しない状態のまま増え続けるのが特徴。米ウィスコンシン大が1998年、初めて作成に成功した。治療や移植に応用するには、目的の細胞に分化させるための条件を調べ、体内で別の細胞になったり、むやみに増えたりしないかを確認する必要がある。

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