(掲載日:2003/07/20)

関西の力 結集させよう

 神戸再生の切り札として、ポートアイランド2期で進む医療産業都市構想。「先端医療センター」や理化学研究所の「発生・再生科学総合研究センター」などの中核施設が本格稼働し、企業も続々と集まり始めた。この一大プロジェクトを引っ張るのが、元京都大学総長で同構想研究会会長の井村裕夫さん。構想の向こうに見える神戸、そして関西の将来像を語ってもらった。(足立 聡)
21世紀は知識社会。新しい知恵や技術で生き残る

東京と神戸を往復する多忙な日々だが、年齢を感じさせない若々しさがみなぎる。「『日々新た』という言葉が好きでして。毎日毎日、少しずつ新しいことに挑戦する気持ちでいます」」=神戸市中央区港島南町2、先端医療センター(撮影・神子素慎一)
 神戸市が構想を表明したのは一九九八年九月。それから五年弱で主要施設がほぼ出そろった。異例のスピードという。

 「日本の常識からすると非常に早いと思うが、国際的にみればこんなものじゃないですか。生命科学分野の進歩は極めて早く、そしてすぐに古くなる。幸運だったのは、発生・再生科学総合研究センターを誘致できたこと。優秀な研究者が世界から集まり、一つの目玉になった。京阪神の大学や国立循環器病センターなどの支援も受け、大きな枠ができた。これが魅力となって、企業も『神戸へ行こう』となった」

 地元が最も期待するのは産業化。構想の次の展開にも関心が集まる。

 「やはり(産業化の)成功例がほしいですね。スタートしたばかりであまり性急に望むのはいけないが、一つの成功例が出ると、それを目指してまた新しい力が参入してくる。私は、あまり初めから幅を広げるのはよくないと考えて、今までは先端医療に焦点を絞ってきました。しかし、これからの高齢化社会を考えると、実際の医療の幅はもうちょっと広い。例えば介護機器の開発も必要だろうし、健康食品も重要になる。そういう分野に幅を広げる仕組みづくりが課題になるでしょう」

 低迷を続ける関西経済。再生のカギを握るとされるのが、バイオ産業だ。

 「関西の地盤沈下は、東京から見ていても心が痛むほど。しかし、元気を出して未来に向けて何かやらないと。関西が強いのはバイオ産業。大学には研究者が大勢いるし、医療、研究機関もある。力を結集すれば、関西全体が一つの広域クラスター(集積地)になる。神戸以外にも大阪、京都、京阪奈に小さなクラスターができつつあるので、うまく統合し、ネットワーク化することが重要です」

 医療分野も含め、地球規模で競争が展開される現代社会。日本が生き残るには。

 「日本を活性化する力は、ベンチャーだと考えています。それに挑戦しないと。ただ、大学の先生や研究者がベンチャーを立ち上げても、すぐ成功するとは限らない。だから日本の社会も、『むしろ一回ぐらい失敗した方が経験になる』という風土に変えていかないといけないですね。企業経営が分かるパートナーを育成することも大事になります」

 「二十一世紀は知識型社会。モノより人の知恵の時代です。企業も製造設備よりも研究能力を重視するようになる。単なるモノづくりでは発展途上国に勝てない。先進国で米国がいち早く成功したのは、知的財産を守り、技術革新で生き残ることを考えたからです。関西は工業地帯として発展してきたが、新しい知識や技術革新を生む地域にならないといけませんね」

 いむら・ひろお 1931年滋賀県生まれ。62年京大大学院医学研究科博士課程修了。神戸大医学部教授、京大医学部教授、同医学部長を経て、91年京大総長。98年神戸市立中央市民病院院長。同年から科学技術会議(現総合科学技術会議)議員。99年から神戸医療産業都市構想研究会会長。東京都在住。
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