ぶつかる熱い気迫 姫路・松原八幡 灘のけんか祭り本宮

2006/10/16


桟敷席を埋めた人、人、人。屋台の練り合わせに歓声がこだました=15日午後、姫路市白浜町(撮影・岡本好太郎)


神輿をぶつけ合う年番の八家地区の練り子たち=15日午後、姫路市白浜町(撮影・峰大二郎)


本宮に期待をふくらませ、そろえた豪華料理=14日夜、姫路市白浜町

 十五日、本宮を迎えた姫路市白浜町、松原八幡神社の秋季例大祭「灘のけんか祭り」。早朝の厳かな神事で幕を開け、午後は舞台をお旅山に移し、力強い練り合わせや神(み)輿(こし)三基のぶつけ合いが披露された。

 午前五時、松原八幡神社の境内で、松原地区に伝わる「露払いの儀」が行われた。暗闇の中、拝殿前で笛の音に合わせ、氏子らが獅子舞を奉納した。

 各地区の屋台が蔵出しを終え、午前九時ごろから続々と宮入り。境内や宮前で練った後、お旅山への神輿渡(と)御(ぎょ)が始まった。舞台は、ふもとの練り場へ移った。

 露払いの松原地区の獅子だんじりが登場。高々と差し上げられた後、豪快に地面に突き落とされた。

 屋台練りでは二台、三台と重なり、掛け声で激しく揺れた。練り場に土煙が舞った。色鮮やかなシデ棒は入り乱れ、練り子は重みに耐えて気勢を上げた。

 すり鉢状の桟敷席を埋めた観衆から、歓声やどよめきが漏れる。スペインから観光に訪れたアルベルト・イグレシオスさん(35)は「大勢の人々の騒がしさやフレンドリーなところが母国の祭りに似ている」と興奮気味に話した。

 練り合わせが終わった屋台は順に、お旅山山頂の社殿を目指す。急傾斜の坂道を少しずつ進み、山頂に着くころには、夕闇が迫っていた。(井関 徹)

神輿合わせ「命がけ」 年番の八家地区

 「灘のけんか祭り」で、祭礼行事の仕切り役となる「年番」。本宮の清め式「汐(しお)かきの儀」を執り行い、練り場で「神(み)輿(こし)合わせ」を披露するなど、祭りで重要な役割を担う。旧灘七カ村が交代で行うため七年に一度の晴れ舞台。今年、誇りをかけて臨んだ八家地区の本宮を追った。

 午前五時半、練り子や住民らは、神輿幟(のぼり)や屋台とともに八家川河口のえびす浜へ。空が白み始めた六時すぎ、心身を清める「汐かきの儀」が執り行われ、氏子らはしぶきを上げ、播磨灘へなだれ込んだ。

 今春、同地区に嫁いできた福井明子さん(27)は言った。「けがしないように主人に腕守りを渡した。女性は裏方だけど、主人の勇姿を見るのは幸せです」

 出番を待っていた練り子らは午後一時、待ちきれず伊勢音頭を口ずさみ、「ヨーイヤサー」の掛け声で勢いよく境内へ。

 現役で練り子を務める今藤久夫さん(59)は「神輿を担ぐのは最後になるだろうが、こんな年齢でもできることを見せたい」と意気込んだ。

 三基をぶつけ合う神輿合わせは、タイミングが難しい。屋台と違い、土台がなく軽いためバランスを崩すと、どこに落ちるか分からない。命をかけた大一番だ。

 お旅山ふもとの練り場で、三基が激しい音を立ててぶつかる。高々と差し上げられると、拍手が沸き起こった。

 お旅山頂上で神事を終えた片岡信男・祭典委員長(70)が言った。

 「みんな精いっぱいやってくれた。力を合わせた神輿練りが披露できた」(井関 徹、若林幹夫、神谷千晶)

わが家の味 母から娘へ 本宮の弁当作り

 十四日、宵宮の夜。女性たちの戦いはこれからだ。客の接待、そして十五日の本宮で桟敷へ持っていく料理作りは多忙を極める。今も自分の家で調理する家庭は少なくない。中村地区で六十年前から食堂を営む澤田家で、弁当作りを手伝わせてもらった。(神谷千晶)

 テーブルに、ワタリガニにマツタケ、伊勢エビ、車エビが並ぶ。市場から直接仕入れたシャコは六キロもある。

 典子さん(65)の指揮の下、二女久美さん(33)、長男和篤さん(37)の妻りかさん(37)が忙しく立ち動く。

 豪勢な食材に戸惑っていると、「おなかから足の付け根に沿って刺し通して」と、車エビと竹串を手渡された。串を刺すと、エビの足が動く。海の幸はどれも新鮮だ。

 エビを焼くため台所に入る。タケノコや根菜が煮えるにおい、アスパラガスのベーコン巻きやウインナが焼ける音が充満している。ああ、これが宵宮の夜なんだ。

 久美さんは「近ごろはおいやめいの好みに合わせたおかずが増えてきた」と笑った。

 りかさんが「こんなにたくさん、どうやって詰めようか」と言いながらも、手際よく漆塗りの重箱に料理を詰める。長女前田麻紀さん(38)もやってきて、みるみるうちに弁当が仕上がった。

 夜十時半、和篤さんが帰宅した。豪華なお重を前に「母の味を妻が継いでくれてうれしい」と顔をほころばせた。

 淡々と、でも高揚感が漂う夜。祭りを支える女性たちの心意気を見た。


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