3.触れ合いの自転車道(2003/01/05)
早朝 歩いて、走って/囲碁、将棋で集いの場に
 
 乳白色の光が、暗やみを急速に切り裂いていく。海岸線の朝ぼらけ。海と陸の接点を東西に延びるサイクリングロード。ひんやりとした空気に包まれ、足取りも軽く西へ向かって出発した。あちこちに散歩する人々の影が揺れている。

 正式には「一般県道姫路明石自転車道」という。明石川西岸と姫路市花田町とを結ぶ、全長約三十五キロの自転車と歩行者のための道路だ。一九七四年度に着工し、十一年後に完成した。明石市内の距離は約十三キロで、大半が海岸線に沿った道幅三メートルのルート。

 東空の雲がピンク色に染まり始めた。松江海水浴場を左手に見る場所で、散歩中の大久保町谷八木に住む男性(72)に声を掛けてみた。西宮から越してきた一年ほど前から、ほぼ毎朝、愛犬ラブとともに自転車道を訪れる。

 「自分とラブの健康のために歩いている。景色も良く気持ちがいい」。と、二人連れの女性が「おはよう」と、男性にあいさつした。「ラブのおかげでいろんな人と触れ合うことができる」。男性が笑顔を浮かべた。

 朝日が差し始める。明るさを増す自転車道では、時折、ランニングや自転車の人たちとも出会う。

 林崎町の光田弘さん(65)は、自転車道を週五回の早朝ランニングのメーンコースと決めている。走り出したのは十三年前から。「医者から心臓肥大と診断されて始めた。自然の中に身を置き、自然体で無理なく走るのが私のスタイル。自転車道は自然そのもの」

 その後、心臓肥大は消え、今では、各地の幾つかのマラソン大会に参加する。過去三度、市民ランナーの世界的祭典、ホノルルマラソンにも出場し、完走した。「今年の目標は、三年ぶりにホノルルに参加すること。自転車道と同じ海が見えるコースの…」

 林在住の木内勝司さん(68)は散歩派。十年ほど前から、ほぼ毎朝、自転車道を通って谷八木川の河口まで歩く。「アスファルトに亀裂があるなど注文はあるが、素晴らしい道」

 八年前には、糖尿病にかかったが、歩くことでカロリーコントロールし、今では症状は和らいだという。一昨年四月には大病を患い、半月ほど入院。退院後数日して自転車道での散歩を再開した。「歩いていたのでもともと体力はあり、回復は早かった」

 自転車道は、散歩やランニング、サイクリングだけのものではない。松江海岸休憩施設の東側、自転車道沿いの小さな広場は、将棋や囲碁の愛好家が集う場でもある。彼らは、ほとんど毎日、午前十時前後にどこからともなく集まり、夕暮れとともに去っていく。「自然発生的に始まり、三年ほど前から人が増えてきた。多いときで見物人を含めて四十人ぐらい。ほとんどがここで友達になって…」と、将棋の対局に没頭している市内の男性(69)。

 江井島海水浴場のヤシの並木道を抜け、中尾・住吉神社の前を過ぎた。程なく、自転車道が市内の海岸線を走る西端、瀬戸川に到着。道はここから北上する。きびすを返すと、太陽が見上げるほどの高さで輝いていた。

 
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