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仕事場変われど理想求める志同じ
夕暮れの街角に提灯(ちようちん)がぽっと浮かび上がる。夏祭りで、無数のやわらかい光が子どもたちの笑い声を明るく引き立て、夜道では酔客を誘う。その提灯に、文字という“顔”を書き入れ、命を吹き込む職人がいる。 丸山さんが提灯に初めて文字を書いたのは、小学二年生のときだった。字は、本格的に習ったわけではない。「書かなくては生活できなかった」。独学で書き続け、体で字を覚えた。 字の好みは客によってさまざま。客の要望をもとに、依頼された商品のイメージや雰囲気を考えた上で書く。「人の顔がそれぞれ違うのと同様、書くときの気持ちによって文字は色々な表情を見せる。それが面白く、同時に難しい」 所狭しと置かれた提灯に囲まれた店舗の奥で、黙々と作業を続ける。和紙の提灯は、霧吹きで紙を伸ばす。最近増えたビニール製のものも限界まで引き伸ばしたところで、大胆に筆をのせる。後は感覚に身を任せ、でこぼこの多い提灯の上ですらすらと筆を滑らせる。「提灯の字は書家には書けない。読みやすさ、分かりやすさが大事」と力を込める。 最近は賞状、会合の式次第の文字書きなど、本業以外の仕事も増えた。意外なところでは先月の選挙関係。たすき、はちまきといった注文が相次いだ。丸山さんは「プラスチックでも、変わった木でも、たいていのものには書ける」と胸を張る。
ワープロの文字が一般的になっても、依頼主から届く「手書きの文字でないと値打ちがないからね」という言葉。それが、丸山さんの手を動かす。 仕事量を減らしてでも、理想の提灯を生み出すことにこだわる職人もいる。亀谷さんは四年ほど前、市の再開発事業に伴い店をたたんだ。しかし、引っ越した先のマンションの一室で、完全な「受注販売」を続ける。依頼主は亀谷さんの仕事にほれ込んだ市内をはじめ、神戸・垂水や西区などの神社や寺といった古くからの取引先。 提灯の文字書きは手作業ゆえに、同じ文字を書いても微妙な違いが生まれる。しかし、亀谷さんは「常に同じ品質の提灯を生み出すことが理想」という。「もちろん、厳密には違う。でも、伝統がある神社は代々同じものを求める。それにこたえるのがプロです」。厳しい表情で淡々と筆を進める。 経験豊かな二人の職人。異なる個性が、提灯にさまざまな“表情”を与える。あそこでほのかな光を放っている提灯は、どちらが手掛けたものだろう。 |
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