4.源氏物語(2004/05/04)
ゆかりの地巡り浜へ
 
足穂は浜手を歩いて光源氏ゆかりの地を巡った。今、明石海峡大橋と播磨灘を行く船の明かりが浮かぶ=明石浦漁港
 紫式部の「源氏物語」の中で、主人公の恋多き貴公子、光源氏は一時、大観町付近で暮らした。同町の「善楽寺戒光院」は、光源氏を須磨から明石へ導いた「明石入道」の住居「浜辺の館」跡とされ、境内には「明石入道の碑」「明石の浦の浜の松の碑」が立つ。

 江戸時代、文学を好んだ明石藩主松平忠国は、物語にちなんだ名所を領内につくらせたという。

 足穂も、海沿いを散策しながら、光源氏ゆかりの地を巡った。そうして、源氏物語と明石のかかわりをつづった「明石」第四章を書き上げた。

 源氏物語は平安中期の長編作品で、五十四編の十三編目が「明石」の巻。政敵の娘と関係を結んだことがもとで、都を逃れ須磨に隠とんしていた光源氏は、明石で入道の娘「明石の上」との恋物語を繰り広げる。

 善楽寺戒光院に隣接し、足穂が足しげく通った無量光寺(大観町)にも光源氏が月見をしたとの伝説がある。このため、同寺は正式名を「月浦山無量光寺」、別称「月見の寺」という。寺のそばには、光源氏が現在の神戸市西区櫨谷町松本付近に住んでいた娘を訪ねるときに通ったという風流な「蔦(つた)の細道」がある。

風流な気持ちにさせてくれる月見の池=鍛治屋町の光明寺
 無量光寺のわきの小道をくぐって浜へ出た。足穂が光源氏ゆかりの地を巡るのに通った所。「播磨の港の空気を味わうことができる」と記した明石浦の浜辺だ。

 乗合船で沖へ出ていた釣り人たちが釣果を手に笑顔を見せ、昼には漁協の威勢の良い競りの声が響く。足穂は港に泊まった船の明かりが「花のように水のおもてに零(こぼ)れていた」と書いている。宵の口、その場所に立つ。未明の出航を待つ漁船が並び、明石海峡大橋のイルミネーションと播磨灘を通過する船が光を放っていた。

 そこから東に離れた鍛治屋町の光明寺には、源氏物語にちなんだ「月見の池」がある。池に映る月を見て光源氏が詠んだという歌が残る。

 「秋風に 波やこすらむ 夜もすがら あかしの浦の 月のあさがほ」

 風流な気持ちにさせてくれるたたずまいがあった。

〈メモ〉 善楽寺戒光院は西新町駅から徒歩10分、大観町バス停から徒歩5分。無量光寺に隣接する。光明寺は明石駅から徒歩5分。
 
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