台風23号 円山川水系  検 証
 
3.民間の対応/ 経験と危機意識で行動   (05/03/19)
入所者を避難させた後、土砂の流入を防ぐ職員たち=和田山町竹田、真生園(同園提供)

 全但バスの豊岡営業所は豊岡市内で最も浸水被害がひどかった同市梶原にある。事務所は浸水したが、観光バスや路線バス約二十台をすべて避難させ、守ることができた。何が「減災」のカギだったのか。

 台風が来るたび、本社や但馬各地の営業所では国土交通省豊岡河川国道事務所の関係機関向けのテレホンサービスなどで一時間に一度、地点ごとの水位と時間ごとの雨量を確認、一覧表に記録していく。それを見て、和田山など上流の雨量が多ければ、下流の豊岡の水位も上昇するはず―と考えを巡らせ被害を予測する。

 同社では過去の表を残すよう各営業所に指示しており、経験の蓄積もあった。豊岡営業所の古橋竜哉係長は「円山川の豊岡市立野の水位がどこまでくれば、玄武洞付近の道路が冠水するなど分かっていた」と話す。

 同営業所は、すぐそばを流れる円山川や支流の六方川の様子も監視。本社を通じて他の営業所の状況も聞いて総合的に判断することにしていた。

 二〇〇四年十月二十日午後三時すぎ、円山川の水位などをチェックしていた藤原道雄所長は、周辺の道路が冠水し始めたのを見て決断。市内の別の二カ所に車両を移動させ、難を逃れた。

 同営業所ではバスの避難は年に二、三回は行う。水との戦いは冠水しやすい場所に事務所を構える宿命と言える。藤原所長は「バスは大切な商売道具。いつでも逃げられるようにしておかないと万一の時に取り返しがつかない」と力を込める。

 円山川水系の水位などは同事務所のホームページでも見られる。同省は、昨年十二月に示した河川激甚災害対策特別緊急事業の中で、今年の出水期までにテレホンサービスを一般向けにも広げることも盛り込んだ。

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 裏山からの土石流が建物に流入した和田山町竹田の身体障害者療護施設「真生園」。土砂は約一・五メートルたい積した。入所者約六十人の多くは電動車いすなどで生活する重度障害者だったが、一人の死傷者も出さず、全員を無事に避難させることができた。

 十月二十日午後二時四十分ごろ。本館に土石流が流れ込んできたのに職員が気付いた。職員の小山哲也さん(33)らは、休憩していた入所者たちを急いでベッドから起こし、車いすに乗せて素早く本館の中央に一時避難させた。

 約十分後には、同町役場とあさご消防本部に応援を依頼。入所者たちを本館から隣のデイサービスセンターに避難させた。さらに男性職員たちは本館内で土石流を阻止しようと、テーブルやベッドを集めてきてバリケードを築いた。

 同三時半ごろ、救助隊員が到着。デイサービスセンターにも土砂が入ってきたため、園のリフト車や救急車などによる避難が始まった。職員三人で入所者を車に乗せていった。避難場所に車を走らせた職員の中島竜太さん(29)らは「体の弱い人ばかり。体をぬらせてはいけない」と、入所者に毛布をかぶってもらう配慮も忘れなかった。

 職員の対応について岡崎充男施設長(53)は「指揮者はいなかったが、現場の職員一人一人が自発的に動いた。何よりも避難を優先させた判断が正しかった」と振り返り、「全職員に、人命を預かっているという意識があった」と分析している。

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