台風23号 円山川水系  検 証
 

9.住民/「地域力」が命を守る

  (05/03/27)
但馬2市14町の消防団が参加した大規模な水防演習。消防団の果たす役割は大きい=2004年5月29日、豊岡市の円山川河川敷

 台風23号は但馬各地で警察や消防などの機関をマヒ状態に追い込んだ。人命救助のプロの救援が得られなかった一方で、住民一人ひとりの活動が安全をもたらしたケースも多い。

 計三七〇ミリの記録的豪雨に見舞われた但東町では、相次ぐ台風の襲来で地盤が弱くなっていた山が各地で崩壊。土砂崩れが三百カ所以上で発生し、多くの民家を巻き込んだ。

 最も多くの雨が降ったとみられる町東部の奥赤地区では、土石流がスギの大木ごと集落になだれ込み、民家や倉庫など六棟が全壊した。だが、住民の多くが早く避難したため、死傷者はゼロ。同区の小西護区長(71)は「集落がかつてない被害を受けたにもかかわらず、人的被害がなかったのは奇跡」と話す。

 同町では、雨が激しくなる前の十月二十日正午ごろから消防団員が、土砂崩れの危険が高い山間部の集落の住民に公民館などへの自主避難を呼び掛けていた。

 夕方までに同町は外部との交通がほぼ寸断され、消防や警察などの応援が望めなかった。消防団による勧告が遅れて住民が家に残っていた場合、大規模な人的被害が発生した可能性もある。

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 住民でつくる自主防災組織の役割も大きい。

 豊岡市百合地では、かつて北但消防本部の消防次長も務めた羽賀正老区長(66)を中心に、自治会が活躍した。

 羽賀区長は午後一時と三時ごろに区内を巡回して風雨が激しくなっていることに気付き、午後五時に区の会館に独自の災害警戒本部を設置。屋外放送と防災無線で区民に情報提供を呼び掛けた。

 午後六時前後から役員八人と、自主防災組織の六人が集合し、パトロールなどを行った。住民の多くは家の二階に避難していたが、円山川が各地で越水したため午後九時四十分には、住民に高い場所にある神社に避難するよう呼び掛けた。一人暮らしの高齢者はボートを使って避難させた。

 前月に全国で猛威を振るった台風18号を教訓にしたことが、素早い対応につながったという。

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 消防団と自主防災組織に共通する課題は、人員の確保だ。

 少子高齢化と昼間は他地域で働くサラリーマンの増加により、豊岡市や養父市をはじめ多くの自治体で消防団の定員割れが続く。自主防災組織も組織率は高いが人数は不十分。羽賀区長は「自分たちの命は自分で守るという原点に返って一世帯から一人は出してもらい、自治会が自主防災組織の役割を担うべきだ」と強調する。

 自主防災組織については、豊岡市が昨年十一月に全百二十二区の区長を対象にアンケートを実施した。回収率は93%で、25%が「よく機能し特に問題はなかった」と評価する半面、63%が「まずまず機能したが課題もあった」「思うように機能しなかった」と回答。区長らは「勤務などで人数が集まらなかった」「構成員の認識が薄かった」など厳しい現状を訴えている。

 災害時、プロではない住民でも人命を助けることはできる。減災につながる「地域力」を強めるには、日ごろの防災意識と地道な備えが欠かせない。

=検証編おわり=

 (この連載は、森 信弘、幾野慶子、井原尚基、浦田晃之介、大島光貴が担当しました。)

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