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旧体質からの決別宣言
「要は、法令順守より生産・操業優先。これが社風なんでしょうか」―。
神戸製鋼所加古川製鉄所による住民説明会の席上、配布された資料集を手に住民の一人が切々と訴えた。A4判の三十七ページ中、約三分の二がばい煙データ改ざん関連。約三十年間にも及んだ「背信」の記録でもある。
■3点セット
同製鉄所で大気汚染防止法の基準を超える窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物(SOx)を含むばい煙を排出=表参照=し、その測定データの改ざんが発覚したのが五月二十二日。同社は一カ月後に調査結果を発表したが、その内容は「改ざん」に「隠ぺい」や「ねつ造」を加えた複合的な不正だった。
例えば大気環境値のチャート記録はこうだ。@環境基準を超えそうになると、針先を浮かせて記録を中断A校正モードを使って基準以下の数値を手入力B日誌にはチャート記録を手書き―という「大胆で稚拙な手口」(兵庫県幹部)。不正は延べ二千百十二時間にも上った。
関係者を驚かせたのが本社採用の管理職の関与、すなわち「組織ぐるみ」の実態である。同社が約二百人に聞き取り調査した結果、データ改ざんは一九七七年からと判明。「職場の作業標準になっており、管理職の明確な指示があった」と同製鉄所幹部はみる。
背景に挙げられるのが、電気事業法に基づく届け出値の達成が困難だった当時の状況。生産・操業に直結する動力部門の稼働を最優先し、環境への影響は「短時間なら許される」(資料集から)と軽視する姿勢は、操業直後からすでにあった。
そもそも今回の発覚も「偶然」の側面さえある。同製鉄所で事故が相次いだことで、経済産業省による厳重注意を受け、保安強化の報告に伴う調査過程で判明。同社が設けた内部通報システムや、取締役会の諮問機関であるコンプライアンス(法令順守)委員会も結果的に機能しなかった。
■「自己批判」
同社が六月二十二日に公表した資料では、「操業継続のためには、法を犯しても良いとする倫理観が欠如した体質」と厳しく自己批判。意識改革の必要性に触れて「コンプライアンス意識の高揚」を挙げ、副題には「隠ぺい体質からの脱却宣言」と率直にうたった。
行政と結ぶ環境管理システムも更新し、同製鉄所の生データは直接加古川市に送信され、それを同社が受け取る仕組みへと変わった。「性善説から性悪説への大転換」と評価する指摘もある。
組織的な対策でも、七月から環境防災管理部を新設し、監査機能を強化。八月からは二十四時間体制で環境を監視、規制値を超える恐れがある場合は施設ごとの操業停止権限を付与した。
この権限の行使を「操業優先から環境重視へ企業文化を変える試金石」とみる自治体関係者もいる。住民説明会は八日の別府公民館で延べ十三回。信頼回復のため、神鋼幹部らの「おわび行脚」は連日続く。
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ばい煙の測定データ改ざんを機にした神鋼への不信は、周辺住民を長年苦しめてきた粉じんをめぐる社会問題へと発展した。実に三十年にも及ぶ裏切り行為に対し、住民らは「もう我慢はしない」「これは『公害』」と語気を強める。神鋼は飛散軽減策を相次いで打ち出したが、目に見える形で示されない限り、地域の信頼を取り戻すことは不可能だ。「黒い粉」が舞うという地域を二カ月半にわたって歩きながら得た取材ノートを基に、一連の問題を検証する。
(神鋼問題取材班)
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▼住民の声から
市は改善点指摘を
今の住居に暮らして20年近くになるが、いつものどに違和感がある。生まれつきなかったアレルギー症状も出た。地元で栽培した野菜を長年食べてきたが、影響がないか心配だ。
神鋼には「環境より“もうけ第一主義”なのか」と言いたい。地元にはなくてはならない会社だが、市は改善すべき点をはっきり指摘してほしい。(尾上町、女性)
住民対話の継続を
リハビリと体力増進を兼ねて毎朝、床や階段、ベランダの手すりなどをぞうきんでふいているが、白い布はすぐに黒くなる。よくも毎日汚れるものだとうんざりする。
今回のデータ改ざんは言語道断。住民との直接対話が町内会単位で行われているが、単発に終わらず継続してほしい。粉じん対策は神鋼に期待するだけでなく、われわれ住民がきちんとものを言い、実態を監視していくことが大切。(別府町、64歳男性)
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加古川市の住民健康相談(7月15、16日)会場で神戸新聞社が実施した住民アンケートから、住民の声を計5回にわたって紹介する。 |
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