灘の女たち −けんか祭りを支えて

  

下.浸透 (2006/10/14)

子の成長 重ね合わせ
地域に響く太鼓の音が祭りの開幕を告げる=姫路市白浜町

 飛び交う掛け声、檄(げき)。重みが男衆の肩にのしかかり、顔がゆがむ。その上で屋台が躍っていた。

 十三年前。澤田りかさん(37)=姫路市白浜町=は観衆の中にいた。初めて触れる本場の迫力と豪華さに圧倒されながら、結婚を約束していた彼の勇姿を追った。普段とは別人のような熱中ぶり。見とれた。

 埼玉県生まれ。祭りのない地域だった。彼とは東京で出会った。「帰る場所に祭りがあって、うらやましかった」

 結婚から半年後、夫の実家に移り住んだ。習慣も言葉も違った。義母の姿を見て学んだ。

 祭りの日、親せきや夫の会社の同僚ら大勢がやって来る。もてなす側になり、夫の支度や料理を手伝う。「楽しませなくては」と重圧に感じたこともある。でも、本宮でお旅山に登ると、なぜかほっとした。

 移り住んだころに生まれた長男は小学五年生、二男は三年生になった。祭りではいつも法被にふんどし姿。小さくなった足袋を買い替えるたび、成長ぶりが実感できた。

 夫や義父の背を追う、小さな法被姿を見るたびに思う。「やっぱり(祭りを)好きになるんやろなあ。勇ましい姿を見たい。けがは心配やけど」

 今年、長女が生まれた。「ヨーイヤサー」の掛け声で泣きやむ。「なんで女に生まれたんって、聞かれへんやろか?」。祭り中心の暮らしが染みついてきた、と思う。

 この地に根を下ろすと決めている。よそ者だからこそ、確信めいた思いがある。

 「人や環境が変わっても、祭りへの熱い心は変わらない」

 いよいよ、十二回目の祭りが始まる。

(井関 徹)

 
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