個々の交流 広がる期待
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| 懐かしい田園風景。林の向こうに上津台のショッピングセンターが見える=北区長尾町 |
水田に足を踏み入れ、苗を一つ一つ手で植えた。六月三日、北区長尾町の兼業農家、前勝弘さん(54)の田んぼで、同区上津台のニュータウンに住む石倉典子さん(44)と長女みなみちゃん(10)が田植えをした。
長尾小学校のPTA会長を務める前さんが「子どもにとっていい体験を」と、昨年に続き、上津台の三家族を田植えに招いた。みなみちゃんは「はだしで田んぼに入って、気持ちよかった」と喜ぶ。
石倉さん一家が、宝塚市から上津台に越してきたのは二〇〇二年。みなみちゃんが長尾小に入学し、典子さんはPTA役員に選ばれた。「最初は抵抗があったけど、参加して長尾町の人やまちを知ることができた」と典子さん。PTAが縁で出会った前さん一家とは、週末にバドミントンをして楽しむ仲だ。
長尾小がこの春、上津台に移転するまで、みなみちゃんにとって徒歩三十分の通学路は格好の遊び場だった。帰り道、田んぼでオタマジャクシやカエルを捕った。あぜ道でツクシをランドセルいっぱいに集めて帰ったこともある。秋祭りでは毎年、長尾町の子に交じってみこしを担ぐ。
典子さんは、そんな環境に満足している。「上津台にとって長尾町が隣にあることは、すごくラッキー。すぐそばに豊かな自然があってホッとできる。都市部と農村が両方楽しめる」
とはいえ、上津台の住民の多くは、長尾町と接する機会がない。
前さんは言う。「長尾町と上津台では、住民の年齢層や生活習慣も違う。交流は時間がかかるし、難しい」。しかし、こう続ける。「だから、個人から交流を始めていくことが大事」
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旧長尾小は幼稚園舎として改築が進む。その隣に長尾地域福祉センターがある。月に一度、乳幼児とその母親約三十人が集まる。歌ったり、劇を見たり、体操をしたり。子育て支援サークル「ぽかぽかハート」は、いつもにぎやかだ。
長尾町の主任児童委員、辻道恵さん(47)が、若い母親たちの交流の場として二〇〇三年十月に始めた。長尾町と上津台の母子が集まる。参加者の大半は上津台の住民だが、両地区の母親は、子育てを通じ、すぐに親しくなる。
民生児童委員も兼務する辻さんの担当地域には、上津台も含まれる。辻さんにとって両地区は「子どもを見守る同じ範囲」だ。
ニュータウンの出現を、辻さんは歓迎する。「これまで田んぼしかなかった所で、都会も味わえるようになった。パートに出ようと思えば、迷うほどたくさんある。子どもの数も増えた。私は今の長尾町が好き」
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ふるさとは狭まったのか、それとも、広がったのか。その答えは、住民一人ひとりが、見つけ出していくことになる。
=おわり=
(上田勇紀)
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