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 安倍晋三首相が、夏の参院選で憲法改正を争点化すると発言し、波紋が広がっている。

 NHK番組で、参院選では自民、公明両党に加え、おおさか維新の会など改憲に前向きな勢力と連携し、国会発議に必要な定数3分の2の議席獲得を目指すと明言した。

 「未来に向かって責任感の強い人たちと3分の2を構成していきたい」との言葉は、改憲について従来の「国民的な議論」に期待を寄せる発言に比べ、踏み込んだ内容だ。国民にとって唐突感は否めない。

 強気の背景には安全保障関連法成立後に下落した内閣支持率が回復傾向になったこともあるのだろう。

 自公両党は衆院で3分の2を超える議席を持つが、参院で3分の2超に達するには改選議席に27の上積みが必要で、ハードルは高い。おおさか維新の会などの協力を得られれば、国会発議は現実味を増す。

 だが、安倍首相は憲法のどの条項を改正するかは語らず、改憲への意欲ばかりが前面に出ている。

 念頭にあるとみられるのは「緊急事態条項」の創設だ。大災害時などに首相の権限を強化し、国民の権利を制限する。憲法学者らの間では「現状でも対応は可能」など否定的な意見が少なくない。

 ただ、安倍首相が9条を改憲の本丸とする考えに変わりはないだろう。これまでも正面突破を避けながら改正を目指してきた。第2次政権発足直後には、改正の発議要件を緩和する96条改正に意欲を示した。

 その後、閣議決定で9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認し、安保関連法を成立させた。「違憲」とする憲法学者が大半であり、本来、憲法改正を発議し、その是非を国民に問うべき問題である。

 憲法の空洞化を進める一方、足場が一定程度固まったのを見計らって改憲の積極発言に踏み込む。これでは懸念が膨らむばかりだ。

 与党内からも戸惑いの声が上がる。公明党の山口那津男代表は「国会の中で議論は成熟していない。国民の理解も伴わなければならない」とし、自民党の二階俊博総務会長も「(改憲に)努力するにせよ、国民と合意できるところには至っていない」と述べる。当然の意見だ。

 国民を置き去りにし、勢いで改憲を叫ぶような姿勢は危うい。前のめりと言わざるを得ない。

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