問われる一般施策の活用
2002/03/27

 法の対象となる地区の人口が都道府県別で全国最多、地区数は同二位。そうした状況の下、兵庫県は一九六〇年代から同和対策事業に取り組み、七〇年代後半、全国的にも早い段階で事業規模はピークを迎えた。一方、七〇年代前半から「行政の主体性」を強調して運動体と距離を置き、対策事業の見直しにもいち早く手を着けてきた。こうした経緯が、地域改善対策特定事業財政特別措置法(地対財特法)の期限切れを迎えても、「兵庫県内では激変なし」という、今回の調査結果につながっている。(新開真理)

 ◆法が担った役割

 地対財特法は、国や自治体が行ってきた同和対策事業を支え、地区内外の格差を是正する目的で制定された。住宅、道路など生活環境の改善や、産業振興、職業の安定、教育の充実など関連事業費の三分の二を国が補助、起債を組み合わせれば、自治体の実質的な負担は一割未満で済む制度になっていた。

 ◆廃止される事業

 今回の神戸新聞社の調査は県内の二十二市と各市教委を対象にした。

 「法の期限切れに伴い、本年度末で廃止、縮小される施策がある」と回答した市・市教委は、神戸▽尼崎▽明石▽西宮▽相生▽加古川▽加西▽伊丹▽高砂▽小野▽宝塚▽芦屋▽川西―の十三市。

 奨学金や教育奨励金制度を廃止(一部は経過措置あり)する市・市教委(神戸、明石、加古川、伊丹、高砂、小野、川西)が目立った。

 他の施策としては、税の減免(加古川市)▽事業者、就労者への支援(神戸、西宮、伊丹、宝塚、芦屋、川西)▽医療費助成制度(伊丹市)▽同和教育推進指導員の配置(川西市教委)―などの廃止・縮小が挙がった。

 ◆継続される事業

 期限切れ後も市単独で同和対策事業の継続を予定している市・市教委は、神戸▽姫路▽尼崎▽明石▽相生▽赤穂▽三田▽洲本▽伊丹▽豊岡▽西脇▽三木▽宝塚▽川西―の十四市。

 尼崎、西脇市教委などで、奨学金を、現在利用している生徒の卒業まで継続支給するほか、家賃の特別負担調整(川西市)▽隣保館、集会所の設置、運営(豊岡市)―などが予定されている。

 ◆新たな施策

 「同和事業の終結を受け、人権擁護と差別解消の目的をもって新設、拡充する一般施策はあるか」との問いには、神戸▽姫路▽尼崎▽明石▽西宮▽加古川▽西脇▽三木▽高砂▽三田▽加西▽伊丹▽宝塚▽芦屋▽川西―の十五市・市教委が「ある」と回答した。内容は<表>の通り。

 ◆機構の名称変更

 法の失効に伴い、半数近い市・市教委が、担当部署の廃止、縮小や名称変更を予定している。神戸市などが人員を減らす方向のほか、「地域改善」「同和」などの呼称を「人権」に変える予定の市・市教委(加古川、赤穂、西脇、高砂、伊丹)が目立つ。

 ◆教育分野に配慮

 地対財特法の対象は全国四千六百三地区、約九十万人。総務省のまとめでは、三十三年間で計約十五―十六兆円が投入された。地区住民の就職や進学を経済的に支援する個人給付事業は、大きな柱の一つだった。

 兵庫県は新年度、「県高等学校奨学資金」として約二億五百万円を計上。同和地区に住む関係者で、高校、大学などへの進学者だけを対象にしてきた「地域改善対策奨学資金貸付金」制度に代わる一般施策で、国からも二分の一の補助がある。対象を限定しない代わりに所得制限を設け、一学年で約八百人の利用を見込む。現行制度の利用者には、卒業までの経過措置を講じる。

 ◆新たな模索

 「特別対策を続けることが、部落差別の解消に本当に有効だろうか。劣悪な生活環境は、ほぼ解消されたと言える」。

 総務省地域改善対策室は、今回の期限切れ、失効の背景をこう説明する。長らく同和行政の調整役だった対策室自体も、三月末で廃止される。

 一方、部落解放同盟などは、地対財特法がハード整備の推進に役立ったことは認めながらも、「法が切れることで『同和対策は終了した』との意識が広がり、ひいては『同和問題は解決した』とみる人が増えるのでは」との懸念を抱く。

 こうした声を背に、自治体の中には新しい人権・同和行政のあり方を模索する動きも芽生えている。

 伊丹市教委は「人権をひとごととせず、自分の問題としてとらえてほしい」と、参加型の講座を主催。二〇〇〇年度から指導者の養成セミナーを開いている。これまでの受講者は約百三十人。新年度も継続する予定だ。

 進学や就職実態、結婚、人々の意識の奥底になお残る差別の壁。被差別の歴史を背負いながらも、一連の特措法の指定を受けてこなかったいわゆる「非指定地区」の問題もある。一般施策を有効に使い、どう差別の解消策を組み立てるかが、各自治体に課せられた宿題になっている。

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