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 乗客同士、直後の救出劇 座席を担架に20人運ぶ
2005/05/05

 ガソリン臭が漂い、血まみれの乗客が横たわる脱線現場。そこでは、みずからも負傷した乗客たちが手分けして必死の救助活動を行っていた。恐怖とショックでぼうぜんとした乗客の中から「けが人を助けよう」と声が上がり、消防到着前から閉じこめられた人たちを運び出した。取り外した電車の座席を担架代わりに約二十人の負傷者を救助したが、救えない命も多かった。「助けられなかった人のことを思うと悔しい」。無念の思いがあらためて広がっている。(大原篤也、小林伸哉)

 神戸市北区の会社員小川清隆さん(51)は、取引先に向かうため、脱線した快速電車の五両目に乗っていた。マンションに衝突した瞬間、「ドーン」という衝撃音と金属がつぶれるような「クシャクシャ」という音を聞いた。

 車内の通路に投げ出され、ドミノ倒しのように人と荷物が覆いかぶさった。「気が付くと、天井が見えた」。散乱した乗客の持ち物の中から自分のかばんを探しだし、車外に出た。

 警備員の教育指導を行う資格を持つ。指導内容の一つに「非常時の人命救助」がある。現場の行動マニュアルも熟知していた。ためらわず大声を上げた。「おーい、救助するぞ!」。騒然とした事故現場に十五人ほどの男女が集まった。

 車両がめり込んだマンション駐車場の地下部分には、投げ出されて大量出血している三人の乗客がいた。ガソリンも流れ出し「急がないと危ない」と感じた。他の客らと協力して負傷者を地上に引き上げ、「もう大丈夫だ」と声をかけた。

 急ごしらえの「救出隊」だったが、次第に役割分担ができていった。担架代わりの座席を運ぶ人、負傷者を抱え出す人、車内の荷物をまとめる人…。住民や警察官も加わり、負傷者の多かった三両目からも次々と乗客を運び出した。

 死者が集中した二両目では、閉じ込められた乗客がコンコンと車内からたたいて助けを求めていたが、重機がなく断念した。「もっと助けられたかもしれない。もっと助けたかった」。命を救った喜びより、救出できなかった無念さが募る。

 その後、到着したレスキュー隊に救助を任せた。一緒に取り組んだ学生らしい男性と手を握り合ったが、表情はともに沈んだままだった。事故後二時間ほど現場に残った。腰の痛みに気付いたのはちょうどそのころだった。

 JR運転士二人が救助を行わず出勤していた―と聞いて、小川さんは耳を疑った。「ここまでくれば、個人というよりも組織の体質が問題ではないか。JRは安全運行という最大使命を忘れているとしか思えない」

・特集「尼崎JR脱線事故

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