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「食べやすさ」など諸説
「たこ焼き」VS「明石焼き」。似たもの同士の勝負だが、探偵は迷わず、明石焼きに軍配を上げる。柔らかい生地、プリプリのタコに、独特のだしが味を引き立て合い、最高のハーモニーを奏でるのだ。ところで、お店で明石焼きは「上げ板」という板皿に並んだスタイルで出てくるのが一般的。で、今回の疑問はこの上げ板。げたのように裏側に歯が付いて、わずかに手前に傾斜しているのだが、この傾きは何のために? 明石焼きをこよなく愛する探偵が探った。(本田純一)
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| 上げ板に、焼き上がった明石焼きをさっと移して…=いずれも明石市内 |
◆一層ソフトに
明石で生まれ、地元では「玉子焼き」と呼ばれる明石焼き。グルメブームと一九九八年の明石海峡大橋開通の追い風に乗ってブレークし、いまや全国区になった。
月に一度は必ず明石焼きを食べる探偵がまず気になったのが、たこ焼きとの違い。すぐに分かるのは食べ方。ソースを付けるたこ焼きに対し、明石焼きはだしに漬けることが多い。では、ほかに異なる点はないのだろうか?
明石市内外の百店以上の明石焼きを食べ歩き、「日本明石焼き研究会」を主宰する遠谷彰さん(29)=神戸市須磨区=が解説する。「明石焼きは『じん粉』と呼ばれる小麦粉のでんぷんを生地に入れるので柔らかい。また熱伝導率の高い銅鍋で焼くため、鋳鉄の鍋を使うたこ焼きに比べ、一層ソフトに仕上がる」。つまり、決定的な違いは生地の柔らかさで、「たこ焼き以上に、生地の出来が味を左右する」と強調する。
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| およそ10度の傾斜がある上げ板 |
◆およそ10度
明石焼きの歴史は江戸時代にさかのぼる。ルーツについては、明石城主に納めるお菓子を作った際に残った卵の白身を利用して生まれたというのと、「明石玉」という模造さんごを製造したときに残った黄身を使って誕生したという二説が存在する。
また、たこ焼き研究家の熊谷真菜さんの著書「たこやき―大阪発おいしい粉物大研究」によると、明石焼きには少なくとも明治中期には、タコが入っていたらしい。昭和初期には、明石焼きをヒントに、たこ焼きが生まれたという。明石焼きは、たこ焼きの兄貴分なのだ。
明石焼きの上げ板は、一般的に木製で、一、二本の歯が付いていたり、台形の箱型になっていたり。色も、朱塗りだけでなく、木目の無地も多い。
傾斜角度は店によって異なるが、およそ10度。しかし、この傾きがいつからあるのかは分かっていない。
◆板の歯は「持ち手」
では、なぜ傾斜しているのか? 明石市内の上げ板製造業者に聞いてみた。「ヤスフク明石焼工房」の安福保弘さん(64)は「盛りつけたときに見栄えがいいからでは」と推測。後藤木型製作所の後藤憲治さん(57)は「食べるときに、明石焼きを取りやすい」。
また、同市内の明石焼き店。約四十年のベテラン、川崎智恵子さん(59)は「上げ板の歯は『持ち手』。焼き上がったときに、柔らかい明石焼きの形を崩さないよう、銅鍋から上げ板に直接移すために必要。傾斜の起源はこれでは」と話す。
しかし、いずれにしても説に過ぎない。その後も多くの人に聞いてみたが結局、これという理由は見つからなかった。
しかし、探偵は思う。どの説も正しいのではないかと。もしかすると、「持ち手」に過ぎなかった歯があることで上げ板が傾き、結果的に、見栄えや食べやすさなどにつながったのかもしれない。
「あかし玉子焼研究所」を主宰する神戸学院大学(神戸市西区)の経済学部教授、角村正博さん(54)はいま、明石焼きの上げ板に関心を寄せている。「傾いた上げ板が、明石焼きをより魅力的にした。今後、最も適切な傾斜角度を突き止めたい」と力を込める。
やはり明石焼きは、奥が深い。
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