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利用者の「道しるべ」強調
| 「次は○駅、○駅〜」。ああ、また今日も聞こえる電車の車内アナウンス。ずっと気になっているのですが、あれ少し過剰だとは思いませんか? 停車駅の案内だけならまだしも、「危険物は持ち込まないで」「携帯電話は音を消して」「席は譲り合って」などなど、あらゆる事態を想定した「注意放送」は、乗車中ほとんど途切れることがありません。気になりだすと余計に気になる。本を読むのもままならない。微に入り細に入り、なぜそこまで注意を促すのか。(黒川裕生) |
▼実態は
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| 「すいたドアから分かれてご乗車ください!」。車内だけでなく、ホームでも響く「親切」なアナウンス=神戸市中央区、JR三ノ宮駅 |
探偵が通勤で利用しているJR神戸線。ある日の新快速の車内放送を紹介してみよう。
「次は三ノ宮、三ノ宮。お出口右側、四番乗り場に到着します。快速電車、普通電車ご利用のお客さま、向かい側三番乗り場からの発車となります。また阪急、阪神、地下鉄、ポートライナーをご利用のお客さまはそれぞれお乗り換えです。三ノ宮を出ますと次は神戸、明石の順に止まります。次は三ノ宮、三ノ宮。右側のドアが開きます。ドアから手を離してお待ちください―」
あらためて文字にしてみると、その「至れり尽くせり」ぶりには恐れ入る。さらにホームに降りれば、「ご乗車ありがとうございます。足元にご注意ください」などと拡声器で呼び掛ける駅員の声や、「プルルル」と鳴り響く発車のベルが四方から押し寄せてくる。
ちなみに探偵は、東南アジアやインドなどを旅したことがあるが、このような放送を聞いた記憶はない。タイではそのため、停車駅が全く分からずに目的地を通り過ぎてしまい、旅行ルートを変更したこともある。聞くところによるとヨーロッパなどでも放送はあまり聞かれないようで、日本が突出しているらしい。もちろんJRだけでなく、鉄道各社が同様なのはみなさんご存じの通りだ。
▼やめたら混乱
これについて、JR西日本(大阪市)広報部から寄せられた見解は「放送は利用者にとっての道しるべ」というもの。文面にはマニュアルがあり、「伝わること」を主眼に作成されているという。「初めてその電車に乗る人にとっても、乗り換え案内などはやはり必要。放送をやめたらむしろ混乱を招くのでは」
それでも放送を「煩わしい」と思う人は少なからず存在する。現に、山陽新幹線のひかりレールスターには、「サイレンスカー」という、発車・到着時と非常時以外は車内放送が一切流れない車両がある。利用者のそうした声を反映して導入されたものだという。
▼大半は歓迎
そしてこの問題、この人を抜きには語れない。これらの放送を「文化騒音」と呼んで不快感と怒りを表明し、「うるさい日本の私」などの著書で批判を続ける電気通信大学(東京都)の中島義道教授(61)だ。放送を聞きつけるや、「やめなさい!」と直接抗議する中島教授は「戦う哲学者」としてその名を知られる。
そんな中島教授、長年の戦いを通じて「あの放送を自分以外の多くの人が歓迎している」ことを痛感したという。「だからいくら『うるさい』と苦痛を訴えても、『そんなことを言うのはあなただけ』と取り合ってもらえない。社会に、音に苦しむ少数派への想像力が欠如している」と問題の根深さを指摘する。
一方、「過剰だと感じる放送は多いが、視覚障害者が出歩くときのひとつの手掛かりになっているのも事実」と話すのは、県視覚障害者福祉協会(神戸市中央区)職員で、自身、中学のときから全盲の仁枝(にえだ)玲子さん(34)だ。「ただし無意味な注意放送が絶え間なく流されることで、本当に知りたい情報がかき消されることもある。放送を流す際は『これだけ流しているから大丈夫だ』と自己満足するのではなく、『何が本当に必要な情報なのか』を考えてアナウンスしてほしい、と思う」
そろそろあまり意味のない注意を繰り返すのはやめ、放送は最低限にとどめる日も設けてみてはどうか。静寂を愛する探偵のささやかな願いだ。 |