はてな?探偵団

78.地デジはなぜ遅れるの? (2008/02/13)

映像データ処理に時間

 わが探偵局には二台のテレビがあるが、そのうちの一方が昨年、地上デジタル放送対応になった。さすがに画質ははっきり、くっきり。アナログ放送と見比べても画質の美しさは一目瞭然(りょうぜん)だ。しかし、二つをじっと見ていると、地デジの画像と音がアナログを追いかけているように見える。同じ番組なのに新しい地デジの方が古いアナログより遅れているのだ。なぜ地デジの方が遅れるのだろう。(吉本晃司)

▼加工、復元に4段階必要

 探偵局の地デジテレビは三菱電機製。同社の京都製作所で製造していると聞き、さっそく訪ねた。

 テレビ放送には、アナログ地上波、BSアナログ、地上デジタル、BSデジタルのほか、それらを受信して再送信するケーブルテレビ(CATV)などがある。「アナログ地上波は電波を地上で送信し、テレビにそのまま映すのでほぼリアルタイム。BSアナログは電波が地上と衛星を往復するので約〇・五秒遅れます」。つまりBSアナログ放送にも遅れがあるが、距離の遠さが原因だ。

 これに対し、デジタル放送の遅れはデータ処理の時間が原因。地上デジタルは、高画質なハイビジョンの場合、データ量が標準画質の約四倍ある。そのままだと大きすぎて伝送できないのでデータを圧縮する必要がある。圧縮後も電波に乗せるための信号に加工(変調)しなければならない。圧縮、変調は放送局側で行われるが、電波を受信したテレビでも、元に戻すための復調、伸張を行い、やっと放送が見られるようになる。地デジが遅れるのはこの圧縮、変調、復調、伸張という作業が必要になるからだ。CATVも地デジを受信して再送信するので、通常の地デジと同じように遅れることになる。

▼東京より約2秒遅い

 圧縮、変調、復調、伸張の四つのうち、最も大きな影響を及ぼすのは変調と復調だ。この二つで一・五―二秒の時間が必要で、タイムラグの大部分を占める。変調、復調に比べれば、圧縮、伸張にかかる時間は小さい。三菱電機によると、「圧縮、伸張は技術の進歩である程度短縮できる可能性があるが、変調、復調を大きく短縮するのは難しい」という。

 NHK神戸放送局技術部の秋山一浩チーフ・エンジニアによると、「東京から送信されたデータは大阪を経由し神戸に届く。大阪でも復調と変調をしているので、神戸の家庭では東京より約二秒遅れている」という。兵庫県内の各地域にある中継局はデータの変調・復調をしていないので、地方で、さらに遅くなるということはないそうだ。

 ただ、映像の時報と実際の時刻がかなりずれるので、NHKのニュース番組直前に流れていた秒針が動く時報はなくなっている。探偵局のテレビで確認すると、正午のニュース前には、秒針のない丸い時計が表示され、バックにすーっと消えていく映像になっている。

▼高画質などメリットも

 探偵宅のテレビはいまだアナログ地上波しか映らないが、二〇一一年七月にはアナログ放送が停止し、デジタル放送のみになる。スポーツ中継や生放送が「二秒遅れの世界」になり、緊急地震速報も影響を受ける点は、近畿総合通信局の佐藤茂樹放送課長も「やむを得ない」と話す。

 しかし、放送のデジタル化には大きなメリットもある。高画質な映像やCD並みの音質を楽しめたり、クイズやアンケートに答えて番組に参加できたりするのは、ご存じの人も多いだろう。

 デジタル放送はデータも送信できるので、天気予報や最新ニュース、視聴者が住む地域の生活や医療情報などがいつでも表示できる。災害時には地域ごとの避難勧告や避難場所を表示すれば、緊急の対応にも威力を発揮する。

 多少の遅れを案じるよりも、地デジのおかげで生活が楽しく、便利になる世界が来ると前向きにとらえようではないか。

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