神戸市の特養 入所基準導入から1カ月
2002/07/12
 特別養護老人ホームへの入所希望者が全国的に増え続ける中、神戸市で六月から新しい取り組みが始まっています。入所者を決めるのに、これまでの申し込み順優先を改めて、介護の必要性や緊急度を重視することにしたのです。「本当に必要な人から入所してもらおう」との目的ですが、一カ月がたち、課題もみえてきました。現場から報告します。(小林由佳)


「緊急度」重視 現場に戸惑い/介護不安解消されず?

 定員五十人の特養「真愛ホーム」(同市中央区)。現在、九十四人が入所を申し込んでいる。

 「今すぐにでも入所が必要な方は多い。何とかしてあげたいが、緊急度の高い重度の人ばかりを受け入れる態勢が整っていない」。施設長の二宮英喜さんはこう話す。

 重度の介護を要する人は、医療ケアを受けているケースが少なくない。例えば「胃ろう」。口から食事を取るのが難しい場合に、腹部に穴をあけて胃にチューブをつなぐ人工栄養の方法だが、看護師が対応する必要がある。日勤の看護職員が二人の同ホームは、胃ろうの入所者は一フロア三人まで、計六人と決めている。

 「ケアの質を保つために、これ以上の受け入れは職員を増やさない限り無理」と二宮さん。お年寄りが感染症を持つ場合は個室が必要だが、それも数が限られる。事情はほかの特養もさほど変わらない。ハード、ソフト両面で、限界があるのが実情だ。

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 「必要な人を優先的に」と始まった入所者決定の仕組みはこうだ。

 (1)お年寄りはケアマネジャーを通して入所を申し込む(2)ケアマネは、本人の状況や介護者の有無、在宅サービスの利用率を基に定めた全市共通の「評価基準」に沿って、介護の必要性を点数化(3)この点数とケアマネが記入した特記事項をもとに、各特養の「入所検討委員会」が施設の事情なども踏まえて優先順位を決める。

 最近、二宮さんの施設は独自の工夫を加えるようになった。

 施設内の五十床を(1)終末期や感染症(2)寝たきり(3)痴ほう(4)介護度が軽いに分類。申込者も同じように四グループに分け、それぞれで優先順位をつける。

 こうすれば、寝たきり用のベッドが空いた場合、同じく寝たきりの待機者の中から、優先度の高い人が入所できる。「これなら現場が混乱せず、スムーズに受け入れられそう」と二宮さんは期待する。現在、マニュアル化の真っ最中だ。

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 「思ったほど、介護不安が解消されていないのではないか」。特養が加盟する市老人福祉施設連盟(老施連)の理事長、吉岡正勝さんはそうみる。

 新しい取り組みは「いざというときに入所できなかったらどうしよう」というお年寄りの不安を取り除くためにも始められた。これにより、予約的な申し込みは激減するとみられていた。

 吉岡さんが施設長を務める「協同の苑六甲アイランド」(同市東灘区)では、三月末に四百二十二人だった待機者は、六月末には百十人に。確かに減ったが、待機者の44%は要介護度が「1」または「2」と軽い。

 かつての待機者四百二十二人全員に聞き取りをしたところ、「必要性が高まってから申し込む」と答えたのは15%にとどまり、「再び申し込んだ」26%、「ほかの施設に入所した」23%。病院や老人保健施設に退院・退所を求められている人からの“予約”もあった。

 吉岡さんは「施設をある程度増やすことも大切だが、不安解消には在宅ケアの充実が欠かせない」と指摘。入所者決定の評価基準や方法については、「完ぺきではない。老施連で情報交換し、問題点がはっきりすれば、改善したい」と話している。

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