神戸のエイズ国際会議から4カ月

2005/11/03
 七月に神戸で開かれた「アジア・太平洋地域エイズ国際会議」から四カ月。NGO(非政府組織)関係者らはこの会議を「国内の無関心層に訴える最後の機会」として力を注いだが、十月末に発表された兵庫県内のエイズ検査・相談件数などでは、目に見えるような変化は出ていない。日本は先進国で唯一エイズウイルス(HIV)感染者が増え続ける国とされており、関係者らは年齢層を絞るなど、工夫を凝らした啓発活動を続けている。(溝田幸弘)

伸びない検査・相談件数/中高年層の患者増加

 「あんたも持って帰ったら?」

 「えー、私はいいわ。そんな相手おらんし」

 「何かあったときのためやんか」

 神戸・三宮にある洋酒喫茶「どん底」。冒頭のようなやり取りをしながら、啓発用のコンドームに手を伸ばすOLらの姿が「最近は目に付くようになった」と、経営者の鈴木和香子さんは語る。

 性感染症予防啓発ボランティア団体「BASE KOBE」(神戸市内)の活動に賛同し、募金箱とともに二年半ほど前から置いている。現在は三宮周辺のクラブ三、四軒でも配ってもらっているという。

 「どん底」は創業約五十年の老舗。落ち着いた雰囲気を求めて足を運ぶ常連客は、若者から年配者まで幅広い。「若い人には、恋愛相談のついでにエイズの話をすることも」と鈴木さん。

 年配客もコンドームを手に取るなど、関心を示しているという。「ここで雑談しながら覚えた知識を、家庭や職場で伝えてもらえれば。身近な人から聞くのが一番いいから」と鈴木さんはつぶやく。

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 世界七十カ国から約二千七百人が集まったエイズ国際会議は新聞やテレビで連日報道され、閉会後はエイズに対する理解の拡大が期待された。しかし、兵庫県内の今年四月から九月末までのエイズ検査、相談件数はそれぞれ千三百五十七件、千八十七件と、いずれも平年並みにとどまっている。

 一方、県内のHIV感染者数とエイズ患者数は十月二日現在で計百七十八人。四月から十四人増で、少しずつ、しかし確実に増え続けている。

 関係者が特に懸念しているのが、中高年層のエイズ患者の増加だ。若年層に比べてエイズについての知識が乏しく、発症するまで感染に気づかないケースが多い。

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 エイズ国際会議の後、「BASE KOBE」代表の繁内幸治さんは啓発用ステッカーを作り、路上で演奏したり詩を描いたりして人気を集めるストリート・パフォーマーに配ってもらう活動を始めた。「若い世代がエイズに関心を持つきっかけを作りたかった」という。

 一方、繁内さんは「どん底」などのクラブには、若者だけでなく中高年層への啓発を期待する。「昔はエイズという病気そのものがなかったから、関心を持ちにくい」と繁内さん。年齢層に合わせてPR活動を展開し、理解を広げようと、取り組みを続ける。


「夫から感染の妻も」 神戸大でシンポ

 エイズについて専門家らが語るシンポジウム「ジェンダーとHIV/AIDS」が神戸大学で開かれ、学生や市民約六十人が出席した。

 国連人口基金東京事務所の池上清子所長は、国内外の情勢を比較して「日本では十代の中絶が増加傾向にある」などと指摘。東大情報学環交流研究員の水島希さんは「風俗店で働く女性の六割はコンドームを使いたいと思っているが、実際に使っているのは一割程度」という調査結果を発表、「客や店の要望で、女性にしわよせがいく」と訴えた。

 啓発活動では、神戸市兵庫区保健福祉部の白井千香主幹が「外国人や同性愛者などの人々と行政が直接接点を持つのは難しい」と述べ、NGOなど市民団体との連携の重要性を説いた。

 会場からは「性行為を控えればいいのでは」といった質問があり、「BASE KOBE」の繁内幸治代表は「妻が夫から感染する場合もある」と答えて、「特定の人が感染する病気」という考えを改めるよう呼びかけた。

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