| 国内で初めて狂牛病にかかった牛が千葉で見つかって2カ月足らず。続く感染報告はないものの牛肉の売れ行き不振や食品の原料切り換えなど影響が広がっている。誤解から風評被害も多い。国は食肉処理するすべての牛の検査を始めたが、消費者の不安や戸惑いは収まらない。何が安全で、何に気を付けるべきなのか。疑問に答えた。 |
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一九八六年に英国で初めて見つかった牛の病気。脳がスポンジのようになるため、「牛海綿状脳症」と言い「狂牛病」は俗称。二―八年の潜伏期間の後、立てなくなったり奇声を発したり、その場でくるくる回ったりする行動異常などの症状が現れ、発病より二週間から六カ月で死に至る。 原因はたんぱく質の一種、プリオンが変化した「異常プリオン」だという。正常プリオンは健康な牛の体内にもあるが、異常プリオンが体内に入ることで、正常型が異常型に変わり発症する。 狂牛病に感染した牛の脳や脊髄(せきずい)などをエサとして与えることで口から感染するとされる。このため食肉を取った後の骨や内臓を加工した「肉骨粉」を交ぜた飼料が感染ルートとして強く疑われている。接触や空気ではうつらない。 ◇人への影響 英国での研究でも狂牛病が人にうつるという直接的な証拠はまだないが、人がかかるプリオン病の一つ、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)のうち新変異型との関連が強く言われている。 CJDには新変異型のほか、百万人に一人の割合で発生し、原因が不明の「散発性」▽異常プリオンで汚染された硬膜の移植などによる「医源性」▽先天的な遺伝子異常で起きる「家族性」―が報告されている。 ◇牛からも感染する? 本当に牛の異常プリオンで感染するかどうか、今でも論争は続いているが、狂牛病の異常プリオンと新変異型CJD患者の異常プリオンをそれぞれ別のマウスに接種した際の経過や脳病変が同じことなどから、狂牛病が人に感染する可能性は否定できない。 ◇人のプリオン病 クロイツフェルト・ヤコブ病が五、六十歳前後に多いのに対し新変異型CJDは二十代と若年層にも発生。不安や抑うつなどの精神症状や痴ほう、けいれんなどを伴い進行。半年から二年で無動性無言状態に至る。 この病気が厄介なのは、体の免疫機能が異常プリオンを異物と認識しないため、細菌やウイルスが入ってきた時のように防御反応が起きない点。最近、治療薬や検査法が幾つか発表され、近く国内でも臨床実験が始まるが、まだ効果は未知数。 ◇発症率は これまで十八万頭の牛に狂牛病が確認された英国で、新変異型CJDによる発症・死者数は八月末までの十五年間で計百六人。この比率を狂牛病の牛一頭が確認された日本に当てはめると、理論上、国内で発症する患者は〇・〇〇一人にしかならず、限りなくゼロに近い。つまり今後、狂牛病の牛が千倍にも膨れ上がらない限り発症者は出ない計算になる。 多い年には千数百人もの死者が出る身近なインフルエンザの方が、けた違いに危険度が高いことが分かる。国立精神・神経センター国府台病院の佐藤猛名誉院長も「日本では対策が早く行われたので、過剰に反応する必要はない」と言う。 ◇何が安全? 肉や牛乳、乳製品は国際獣疫事務局(本部・仏パリ、アジア太平洋地域事務所・東京)の基準で安全とされ、日本も厚生労働省と農水省が安心して食べられると言い切る。英国で行われたマウスを使った試験でも、危険部位(脳、脊髄、眼球、小腸先端部)以外からの感染は認められていない。従って危険部位以外なら普通の牛肉をはじめハツ、バラ、肝なども安全。 ◇豚や鶏は? 豚や鶏については、プリオン病そのものの存在が確認されていないこと、狂牛病にかかった牛の脳をエサとして与えても感染しなかったことなどから、農水省は豚や鶏の肉は全く問題ないとの見解を示している。 ◇どんな検査? 食肉処理されるすべての牛が検査対象となる。異常プリオンがあるかどうか、異なる三検査で調べ、狂牛病を判定する。 まず脳の一部、延髄を検査材料として採取し、各地域の食肉衛生検査所でスクリーニング検査を実施。異常プリオンが検出され陽性となると、神戸検疫所などへ送られ、より詳しい二次検査が行われ陽性なら、確定診断を厚生労働省で行う。ここで陽性となって初めて狂牛病と判定。その牛は焼却処分される。いずれかの検査で陰性が確認できれば出荷される。ただし危険四部位は、解体した段階ですべて焼却、解体場から外へは出ない。 ◇正しいリスク判断を 神戸検疫所の内田幸憲所長は「検査体制も整い、新変異型CJDの発生は非常にまれだといえる。肉に限らず、私たちは既に農薬や添加物などある程度のリスクを抱えて生活していることも事実だ。必要以上にナーバスにならず、いろいろなことを考え合わせて選択することが必要だろう」と話している。
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