| 牛は食肉や乳だけでなく、さまざまな部位が加工食品や健康食品、化粧品、医薬品などに使われている。だが消費者にとっては、見ただけや口にしただけでは分からないものも多い。処方薬や治療に用いられる医療用具などは、消費者自身が判断することもできず一部で混乱が起きるなど、影響は多方面に及ぶ。 |
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冷凍食品やレトルトカレー、ハム、ソーセージなど、牛を原材料とした加工食品は多種多様。さらに、牛脂や、くず肉などと一緒に骨を煮込んでつくる牛エキスは、インスタントラーメンやブイヨン、スナック菓子、離乳食などに利用され、ゼリーやババロアには骨や皮から作るゼラチンが使われるなど、用途は広い。 ◇加工食品への国の対策 厚生労働省は十月五日、牛を使ったすべての加工食品について、国際獣疫事務局(OIE)基準による特定危険部位(脳、脊髄=せきずい=、眼、小腸先端部)の使用・混入の有無を確認するよう約百五十の業界団体に通知した。使用や混入が認められた場合は販売の中止と自主回収などの指導をはじめ、保健所への報告を求めた。 中間発表では十二日までに、三千五百余りのメーカーから、約二万八千五百品目の報告があり、北海道、青森県、新潟県にあるメーカー三社が、冷凍食品などを自主回収した。二十四日の締め切りまでに十数万品目の報告があり、十一月初旬にも最終まとめが発表されるが、要はメーカーの自主的な取り組みに頼らざるをえない状況だ。 ◇メーカーの取り組み 保健所への報告だけでなく、消費者の買い控えや殺到する問い合わせに対して、業界団体や各メーカーは、専用の窓口を設けたり、ホームページで自主点検結果を公表したりして、安全性をアピールしている。 ハウス食品や江崎グリコなど二十五社でつくる全日本カレー工業協同組合は十月三日、「カレールウなどに使っている牛脂はWHOの精製条件より厳しい基準で行っている」と安全宣言。ベビーフードメーカー七社でつくる日本ベビーフード協議会も五日、加盟社の製品について「特定危険部位は一切使用していない」との見解を出した。 ◇代替品への切り替えも 加工食品の中でも、レトルトやスナック菓子など多くの食品に使われている牛エキス。脊髄が混じった骨を原料とした場合、病原体が混入する可能性があるといわれるだけに、メーカーが、特定危険部位の不使用や狂牛病非発生国の牛を原材料としていると発表しても、自主的な調査では消費者不安はなかなか解消されない。 さらなる対策を取るメーカーも。「こてっちゃん」が主力製品のエスフーズ(西宮市)は、原料の大半を米国から輸入するなどすべて非発生国の牛を使用しているが、九月末に牛エキスの使用中止を決めた。「二重、三重の安全を考えて」と同社。十月二十二日までに、豚や鶏などの代替エキスにすべて切り替えた。 伊藤ハム(西宮市)も「安全性には絶対の自信はあるが、お客さまが不安に思っている以上、牛エキスは使用しない」と決定。ポークビッツなど牛エキスを使用していた商品について、十一月一日をめどに、エキスを使わないか、代替エキスへの切り替えを終える。 マギーブイヨンなどでおなじみのネスレジャパングループ(神戸市)も、より一層の安全を図るため、国産の原料についてはオーストラリアなど非発生国のものや、牛以外の原料への切り替えを順次、進めている。 調味料の製造会社も、消費者不安や、加工食品メーカーなどからの強い要望を受け、豚や鶏のほか、魚や貝などの魚介類、酵母など、代替品の開発に追われている。 ◇医薬品・化粧品国の対策 昨年、フランスやドイツなどでも狂牛病が発生し、欧州で大騒動になった。日本政府も、経口カプセルや注射によって直接体内に取り込まれれば人体への影響が大きいと懸念される医薬品、医薬部外品、直接肌に触れる化粧品について昨年十二月、予防的な意味合いから措置を講じた。 具体的には、特定危険四部位を含む狂牛病が広がるリスクの高い十四部位は、原産国にかかわらず使用を禁止。さらに英国、スイスなど狂牛病が発生している九カ国と、発生リスクの高いオーストリア、チェコ、デンマークなど二十カ国については、部位にかかわらず一切の使用を禁止した(シカ、水牛、羊、ヤギ含む)。 ◇メーカーの対応 メーカー各社は原料を追跡調査し、危険部位が使われていたものは切り替えていった。健康食品や医薬品のカプセルに多用されている牛ゼラチンは、タンパク質を不活性化させる国際基準を上回る処理を施したり、豚に変えるなど対応を取った。 しかし今年九月、日本でも狂牛病が発生したため、厚生労働省は十月二日、国産牛についても使用禁止や自主回収をメーカーに通知。二十六日までに約三百社から計約四千品目について回収などが必要と報告があり、既に千四百品目余りが回収をスタート、または終了している。 ◇どんな製品を回収? 牛の胎盤(プラセンタエキス)配合の美白化粧品やコラーゲン入りの基礎化粧品が目立ち、日焼け止めや育毛剤、シャンプーや入浴剤なども一部含まれている。医薬品では牛の腸から作る縫合糸などが多い。それらの具体的な商品名については、各メーカーに問い合わせ、説明を受けるのが一番だが、医師や薬剤師向けの「医薬品情報提供ホームページ」にも自主回収した商品が公開されている。 ◇今後の対策は これまでに、医薬品や化粧品での感染報告は国際的にない。厚生労働省は、今回もあくまで予防的措置で、過去に使ったとしても健康被害が出る恐れはないとしている。 しかし消費者に大きな混乱が見られることから、二十九日に開いた調査会で、人への感染リスクを三段階にランク分けし、高リスクのものから優先的に回収や代替製品への切り替えを進めていくことを決めた。 =おわり= (文化生活部の神谷郁代、鈴木久仁子、小林由佳、竹内章、中本裕子が担当しました)
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