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暴力は支配する道具
恵子さんの話をもう少し続ける。
達郎さんは離婚には応じなかった。家庭裁判所に調停を申し立ててほぼ半年後、ようやく成立した。親権は恵子さんになり、わずかだが毎月、養育費も届いている。
新築のマイホームから一転、シャワーもないアパート暮らしになった。食べ盛りの子どもを育てていくために、仕事を終えた後に週三回、深夜までまたパートに出る。
選択に後悔はない。それでも「私さえちゃんとしていれば…。子どもたちから人並みの生活を奪ってしまったのでは」と考えると胸が痛むことがある。
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「暴力は、人と人が対等な関係でないときに、支配する道具として起きる」。大阪・ドーンセンターコーディネーター(相談担当)で、日本DV防止・情報センター運営委員の川喜田好恵さんはそう言う。そして「社会的、経済的に強者と弱者の関係がはっきりしている家庭は暴力の土壌になりやすく、ジェンダーによってそれが合理化される」と指摘する。
つまり「男ってそういうもの」「私の気が利かなかったから」と、暴力が容認されていく。
DVにまつわる幾つかの“神話”がある。DVは特殊な家庭に起こる▽夫婦の問題は夫婦で解決できる▽殴られる方にも原因がある▽子どものために別れない方がよい▽暴力が本当にひどければ逃げるはず▽そのうち暴力はなくなるはず―。
「四人に一人がDV経験者で、十年、二十年と暴力が続いている夫婦もいる。殴るという行為に出ることはその人に問題がある。親のDVを見て育った人が心の傷がいえずに相談に来るケースは非常に多い」。川喜田さんは、相談や各種調査結果などを例に、いずれも神話であることを示す。
調査などから加害者像も浮かび上がっているという。「強い性役割分業意識」「内と外の極端な二面性」「女性に対する所有意識」「深いところでの自己不全感と感情のコントロールの不能」
さらに、DVにはサイクルがある。イライラや不満が高まっていく「緊張形成期」、怒りのコントロールができなくなり、何かが引き金となって暴力に出る「暴力爆発期」、後悔した様子で二度としないと約束し、被害者も期待して踏みとどまる「ハネムーン期」。この周期は短くなり、暴力は激しさを増していく。
まさに恵子さんらのケースであり、達郎さんと加害者像が重なる部分は多い。
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恵子さんは何度も「DVの子どもへの影響は計り知れない」と口にした。達郎さんの言動にびくつき、暴力におびえ、次第に心を閉ざすようになった、と。その子どもたちに最近、笑顔が戻ってきたのが救いだ。
もう一つ。「DVというと、身体的暴力だけと思われがちだけど、心の傷はもっと深いことを知ってほしい」
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