公演スケジュール

WAVE 2011 Winter No.61

「ウェーブ」とは松方ホール友の会が季刊で発行しているニュースのことで、神戸新聞文化財団主催の公演案内や関連情報を掲載しています。
主な掲載情報をご紹介します。



  • 変幻自在の“小三治ワールド”
  • 宇野功芳の“音楽は生演奏(ライブ)だ!!”









  • 変幻自在の“小三治ワールド”
    期待の実力派・三三お披露目も
                  
    「小三治独演会」の演目は前もって発表されません。当日、どんな噺が聴けるかわくわくします。
    小三治師匠は2010年4月の第1回目の終演後、楽屋でこう語っています。
    「北野坂から港の松方ホールへ花吹雪を浴びながら楽屋入りしました。今日の一席目は『長屋の花見』でいこう。一席目を語っているうちに、今日のお客さんと気が合うな、笑いが少ないけれどトリは『品川心中』を演ろうと決めました」
    NHKラジオで演じて以来20年ぶり、大ネタ「品川心中」が初めての松方ホールで語られました。「長屋の花見」を演じながら決める。驚きです。
    2回目、11年5月の独演会は「青菜」で始まりました。
    トリは「あくび指南」でした。正しいあくびを教わる噺。この噺の「まくら」が50分ありました。
    「まくら」は本題が始まる前の落語界導入剤。小三治師匠は「まくらの小三治」と異名をとる、まくらの名手です。
    さて今回のまくらは、「東京やなぎ句会」の話。メンバーの桂米朝師匠の俳号は「米」の字から八十八です。小三治師匠は土茶。どさ回りと、一茶が十人とを掛けたネーミング。機知あふれる抱腹絶倒のエピソードが次々と披露されました。とんがった小三治師匠が行ったり来たり。残念ながらここからオフレコです。
    もっと聴きたいまくら「やなぎ句会」からすっと「あくび指南」へ。魔法のようでした。
    演者の自在な舞台運びに、舞台と客席は呼吸を一にしていました。
    一席目「青菜」からトリまで、振り返れば薫風吹きぬける小三治ワールドでした。
    「落語の景色の中で、お客さんと登場人物、演者が一緒になって遊ぶことができれば、これが落語の醍醐味」。小三治師匠はこう言っています。
    次回が待たれます。
        *
    次回の「小三治独演会」に、小三治師匠の高弟、三三師匠が開口一番で登場。さらに10月には、この松方ホールで「三三独演会」が開催されることが決まっています。次回は、三三師匠のお披露目の場ということになります。
    先ごろ、天満天神繁昌亭で、三三師匠の「橋場の雪」を聴きました。
    雪の隅田川、墨絵のような橋場の渡し。若旦那の色模様。情感豊かな語り口はとても37歳とは思えません。
    上野鈴本演芸場で「五貫裁き」を聴きました。大岡政談もの。弱きを助け強きをくじく、聞かせどころの啖呵の心地よさ。
    東京の寄席中心に精力的に古典に挑む三三師匠。5年前に真打昇進。期待の実力派です。
    秋の「柳家三三独演会」、神戸に楽しみがまたひとつ増えました。
                   村上 健治(メディアプロデューサー)
    宇野功芳の“音楽は生演奏(ライブ)だ!!”     

    第1回 ゾッとさせられた弱音~ムラヴィンスキー

     1953年以来、音楽評論の仕事をつづけているが、その間、往年の巨匠のディスクに大きな感動を受けて来た。しかし、実際の舞台に接したことがなく、録音だけで彼らの芸術を評価することに一抹の不安があることは否定できない。
     その点、実演は違う。顔や姿が見えるだけにその人の魂のすべてが映し出されてしまう。舞台では芸術家が裸になる。ウソは簡単に見破られてしまう。舞台ぐらいこわいものはないのである。  ぼくが60年近くにおよぶ評論活動の中で接したライブの第1位は、ムラヴィンスキーその人である。1973年5月、巨匠はついに東京文化会館の舞台に初登場した。ぼくは彼のコンサートのすべてに通った。2度目、3度目の来日公演にも通いつくした。なんという感動の深さだったことだろう!
     それまでにも彼のレコードはいろいろ聴いて凄い指揮者だということは分っていた。とくにチャイコフスキーの3大交響曲が絶品だった。しかしライブの凄さは桁違いだった。彼が舞台袖から登場したときは、そのオーラに体が震えた。背はすっくと高く、やせ型で、ロシア人らしからぬ面長の顔、深く厳しい表情、鋭いバトンの動きから生み出される音楽、それら全部が別世界だった。いまだかつて経験したことのないものであった。
     もちろんチャイコフスキーもすばらしかったが、ぼくがいちぱん感動したのはモーツァルトの「第39番」ベートーヴェンの「4番」シューベルトの「未完成」の3曲だった。いずれもドイツ音楽でレコードは発売されていなかったが、すべてが神の御業のようであった。谷間に咲く一輪の白ユリのようなモーツァルト、速いテンポでストレートに進めながら、曲の核心だけを厳しく抉り出した抽象的なベートーヴェン、そしてなによりも冷たく青白いシューベルト! あれはなんだ!!
     モーツァルトやベートーヴェンもユニークだったが、「未完成」はもはや神が乗り移ったとしか思えなかった。第2楽章のクライマックスで、本来は最強音が鳴りひびくところを、ムラヴィンスキーはゾッとするような弱音で開始したのである。ホール全体の温度がそのとき確実に下がった。あとで録音が放送されたとき、あまりの違いにびっくりしたが、本物の名演奏は絶対にマイクに入り切れないのである。

    エフゲニ・ムラヴィンスキー(1903-1988)
    ロシア出身の20世紀を代表する指揮者。1938年から生涯にわたり、レニングラード・フィルの常任指揮者を務めた。録音を嫌ったため残された音源は少ないものの、来日公演などでの名演は語り草となっている。

    宇野功芳(うの・こうほう)プロフィール
    1930年生まれ、4歳の時「金の鈴子ども会」に入会、小学校5年生まで童謡を歌う。中学、高校では合唱部に所属。国立音楽大学声楽科卒業。合唱指揮者を目指す。しかし高校時代、当時の名指揮者ブルーノ・ワルターに熱烈なファン・レターを出し、長文の返事が届いたことで、レコード雑誌から原稿依頼が殺到し以後、心ならずも評論が主、合唱指揮は従となった。しかし、名前が知られるようになったため、オーケストラからも請われるようになり、その個性的な演奏が評価され、コンサートの多くがライヴCD化された。ベートーヴェン「運命+英雄」、おとぎ歌劇「ドンブラコ」(キングインターナショナル)、「宇野功芳 叙情の世界」(コウベレックス)他多数、著書は40冊、最新刊は「楽に寄す」(音楽之友社)。

     

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