文化
震災など題材、初の創作絵本 画家・寺門さん
新作を手に思いを語る寺門孝之さん=神戸新聞社(撮影・斎藤雅志) |
天使の絵などで知られる、神戸育ちの人気画家寺門孝之さん(47)=東京都=が、初の創作絵本「ぼくらのオペラ」(イーストプレス刊)を出版した。阪神・淡路大震災の経験以来、人間社会や自然に対し抱いてきたさまざまな思いを、月や星、神や人、動植物などあらゆるものが登場し、歌うオペラに託した。「生」の喜びと悲しみ、数多くの「命」を包みはぐくむ自然の大きさ、豊かさと怖さ…。ユーモラスで祝祭的な絵に、多義的な意味をちりばめ、読み解く楽しさも盛り込んだ。
発行日はきょう一月十七日。二〇〇七年秋、神戸で開かれた「日本文化デザイン会議」神戸会議で議長を担当。「震災から生まれたもの」をテーマに、多くの文化人らと意見を交わす中で、あらためて震災や自然について考え直し、絵本の形にまとめようと思い立った。
当初は、丹波竜の化石発見や放鳥されたコウノトリの産卵のエピソードなども交えた「物語」を構想していたが、長大になりすぎ挫折。「じしんのオペラ」「かみなりのオペラ」「うみのオペラ」など、森羅万象を題材に、ストーリーのない、十四の場面を寄せ集めた形式に改めた。
すべての場面に共通するのは、登場人物らがみな、正面を向いて大きく口を開き、歌っていること。「全身全霊を込め歌うことは、生きること」と寺門さん。生きることの切なさやつらさ、こっけいさ、楽しさ、希望…。画面には多彩な感情、思いが渦巻きあふれる。
また、「一つの見方だけで単純にこの世はとらえられない」と、震災を呼び起こした大地が、恐るべき「破壊」のエネルギーを秘める一方で、温泉などの恵みを与えていることなど、一つの事象が持つさまざまな側面を一枚の絵に表現した。「読む人に感じ考えてほしい」と期待する。
絵本のラストは、人や動植物みんなで大合唱。「うたはかさなる/ないてわらって/おこってわらって/うたってうたってうたって/みんなのオペラ/ぼくらのオペラ」と幕を閉じる。この世の生きとし生けるもの、すべてへの愛と共感を込めた一冊だ。三十四ページ、一四七〇円。
寺門さんは名古屋生まれで三歳から神戸で育った。大阪大文学部卒。震災時は神戸で暮らしていた。現在、神戸芸術工科大教授を務め、東京と神戸を行き来している。(堀井正純)
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