文化
成果を積極的に発信 国立民族学博物館・須藤館長
「暗闇の中、カヌーでミクロネシアの海を渡った恐ろしさが忘れられない」とフィールドワークの思い出を語る須藤健一さん=大阪府吹田市、国立民族学博物館 |
世界各国の民族資料を公開し、文化や生活を研究する国立民族学博物館(大阪府吹田市)の五代目館長に、今春、神戸大教授を退任した須藤健一さん(文化人類学)が就任した。専門はオセアニア地域。駆け出しの研究者時代から二十年近く在籍した思い出深い場所に、トップとして帰ってきた。今年で開館三十二年。入場者数が減少傾向にあるなど、博物館を取り巻く環境が厳しさを増す中、国内外に向けて存在意義をどうアピールしていくのか。抱負を聞いた。 (井原尚基)
-まずは、国立民族学博物館(以下、民博)との出合いから。
「一九七五年の沖縄海洋博に向け、オセアニア各地の民族資料を集めるプロジェクトに大学院生として参加した。指導に当たったのが、梅棹忠夫・初代館長。その縁で、幸運にも開館時のスタッフとして採用され、神戸大に移るまで勤務した」
-民博は、民族学や文化人類学に関する豊富な資料を公開するとともに、研究、教育の機能も持つ。どんな場にしたいと考えている。
「遊園地のような楽しさとは違うが、小学生から大人まで、目からうろこが落ちるような興奮が体験できる場だと思う。今春、開館以来初めてのリニューアルを行い、アフリカ・西アジア地域の常設展示が新しくなった。今後も、館内に並ぶ道具や楽器を使う国・地域の文化的背景が想像できるような工夫をしながら、展示を更新していきたい」
-課題は。
「民博の名は関西では知られているが、全国的、国際的に認知されているとは残念ながら言えない。開館直後は年間約五十万人だった入場者も、最近は十五万人程度にとどまっている」
「開館当時は、民博を一からつくり上げていく、という気概が研究者の間に満ちあふれていた。梅棹館長のリーダーシップの下、次々に本を出すなど活気があった。久しぶりに戻ってくると、時間をかけて深く研究できる環境は整ってきたが、成果を外に向けて発表していく気持ちがもっと必要だと感じる」
-どう変えていく。
「研究者に対し、本の出版やシンポジウムへの参加を促すなど、発信力を養いたい。また二十六万点にもおよぶ収蔵品をもっと生かすため、企画展を増やし、モノを通して異文化を見てもらう-という原点を確認したい」
-ゆかりの深い兵庫に向けては。
「気軽に足を運べるほど近くはないが、兵庫県内での公開講座などに研究者が積極的に足を運ぶよう呼びかけ、民博の魅力を伝えていきたい」
すどう・けんいち 1946年、新潟県佐渡市出身。埼玉大卒、東京都立大大学院博士課程単位取得退学。93年から2009年3月まで神戸大に在籍し、国際文化学部長、付属図書館長などを務めた。日本オセアニア学会長、日本文化人類学会長なども歴任。大阪府箕面市在住。
(4/11 12:00)

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