阪神・北摂
野良猫増やさぬ 不妊手術に助成相次ぐ
不妊手術後に元いた場所に放され、そこで暮らす猫たち=芦屋市内 |
野良猫を増やさないため、不妊手術費を公費で助成する自治体が相次いでいる。阪神間では尼崎、西宮両市が昨年から実施しており、芦屋市も2009年度の予算に盛り込んだ。助成に伴い、これまで手弁当で手術を受けさせていたボランティアらの金銭的負担は軽減。一方、課題となる術後の猫の扱いについては、近隣住民らが世話をする「地域猫」という概念が広がり始めた。「ご近所トラブルの定番」ともいわれる野良猫問題。現状を取材した。(上杉順子)
夕暮れ時の公園。荷台に餌や水などを載せた芦屋市の中田陽子さん(73)=仮名=が自転車のベルを鳴らすと、すぐに十匹ほどの猫が現れた。どの猫も片耳の先がV字型に切られている。不妊手術を受けた目印だ。
捕獲した猫を手術後に地域に戻し、野良で四-五年とされる寿命を全うさせることで、何年もかけて数を減らす。トラップ=わなにかける▽ニューター=去勢する▽リリース=戻す-の頭文字から「TNR」と呼ばれる方法だ。欧米で広く知られた野良猫対策で、日本でも普及しつつある。
中田さんは約十年前から本格的にTNRに取り組む。ある場所では百匹以上いた猫が十匹以下になるなどの効果があったといい、「きちんと管理すれば野良猫は必ず減る。助成は猫が嫌いな人のためにもなる」と話す。
手術後は元の場所に戻し、毎日餌を与える。「手術をすると一代限りの命。その分、長生きさせてやりたい」と中田さん。餌やりは住民の了解を得ていない。食べ残しは回収しているが、猫嫌いの住民から苦情を受けることもあるという。
「地域猫」という言葉がある。特定の飼い主はいないが、すんでいる地域の住民らが餌やトイレの面倒を見る猫を指す。手術後の処遇として、尼崎、西宮市は地域猫か、それに近い存在を目指しており、活動員登録や捕獲には、地元の承認が必要だ。「術後の猫が地域にとけ込めるようにしたい」(西宮市)、「地元の理解が一番大事」(尼崎市)との考えからだ。
一方、芦屋市は地元の承認は求めない方針。市環境課は「捕獲から手術、リリースまでは登録ボランティアにお願いするが、餌やりをしないのなら、地元の了解は必要ないはず」とする。
基金で年間百匹ほどの野良猫に不妊手術を施している芦屋動物愛護協会は「税金でTNRを行うと、猫嫌いの人からの苦情などが出るかも」と懸念する。ただし、「住民と共生できる、適正な生息数がある。そこまで数を減らせば、トラブルは少なくなるのでは」と期待する。
芦屋市は現在、助成対象を団体とするか個人にするかなどについて、登録を想定するボランティアなどと調整中。個人の場合、市域を越えて活動する人もおり、持ち込まれた猫が市内で暮らす猫か分からないことがネックという。四月だった制度開始は、少しずれ込む見込みだ。
「本音を言えば、TNRが一番いいとは思わないが、今はほかに解決策がない」との声も聞かれる。保健所に持ち込まれ、処分される猫の大半は生後間もない子猫。課題はあるが、耳に切れ込みが入った猫を増やすことが、不幸な子猫を生み出さないことにつながる。
(4/5 10:33)

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