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移植手術を終え会見する(左から)高橋政代プロジェクトリーダー、先端医療センター病院の栗本康夫眼科統括部長、同病院の平田結喜緒院長=12日夜、神戸市中央区(撮影・峰大二郎)
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移植手術を終え会見する(左から)高橋政代プロジェクトリーダー、先端医療センター病院の栗本康夫眼科統括部長、同病院の平田結喜緒院長=12日夜、神戸市中央区(撮影・峰大二郎)

 患者の希望が託された「夢の万能細胞」が、実用化にまた一歩近づいた。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った世界初の移植手術が12日、神戸市内で実施。人のiPS細胞が誕生してから、わずか7年で迎えた節目に、研究をけん引してきた理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダー(53)は安堵(あんど)の笑顔を見せた。

 手術終了から約3時間後の午後7時半、先端医療センター病院(神戸市中央区)近くの記者会見場に高橋リーダーが現れた。白い上着と黒いスカート姿。「手術結果は大満足。すぐに多くの人の治療に使えるわけではないが、患者に希望を持ってもらえる」と何度も笑顔を浮かべた。

 同席した先端医療センター病院の栗本康夫・眼科統括部長(53)は「手術に自信はあったが、重圧はあった。頭の中で何度もシミュレーションを繰り返していた」と話した。栗本部長と京大時代の同級生でもある高橋リーダーは「度胸のある人なので安心して任せられた」とたたえた。

 高橋リーダーは網膜の再生医療研究を10年以上続けてきた。所属する理研発生・再生科学総合研究センターが今年、STAP細胞論文問題で研究倫理や危機管理が厳しく問われる事態になり、8月には網膜の再生医療で共に情熱を注いだ同僚の笹井芳樹氏が自殺。高橋リーダーは「もうやめたいと思ったこともあるが、患者さんと毎週会って思いを聞いているので途中でやめるわけにいかない。(患者に)一つの答えを渡せたかと思うと、すごくうれしい」と語った。

 今回の研究で安全性が確認できれば、他の病気の研究にも追い風になる。「今は富士山のように裾野の広い山の2、3合目」と高橋リーダー。「(実用化には)10年はかかると思うが、研究者人生を使って視覚障害の人が暮らしやすくなる形を作っていきたい」と前を見据えた。(岩崎昂志、藤森恵一郎)

【まだ出発点 大阪大の西田幸二教授(眼科学)の話】 iPS細胞を用いた臨床研究の第1号が無事に移植手術まで終えられたことは、iPS細胞の再生医療の実用化にとって非常に重要な前進だ。ほかの研究チームにとっても、どのようなプロセスで臨床研究を進めるべきか、よい参考になる。(移植した細胞の)安全性は高いと考えられるが、まだ出発点なので慎重に研究を進めてほしい。日本の科学技術の存在感を世界に示すという意義も大きい。

【冷静に点検を 近畿大の榎木英介講師(病理学)の話】 今回の臨床研究は治療よりも安全性の確認が主目的で、それを理解しないと患者の期待をあおりすぎる恐れがある。実用化への道は遠いという現状を、社会にしっかり理解してもらうように研究チームには努めてほしい。iPS細胞が医療の研究に用いる材料として有望なことは間違いないが、再生医療への応用の期待が高まりすぎているようにも見える。安全性に懸念が出た時にきちんと中止できるか、臨床研究に対する冷静なチェックが必要だ。

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