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くらし

殺人的労働条件に「NO!」 現代版「蟹工船」に反響 

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皆倉さんがセメントを積み込む映画の一場面。果てしない往復作業が始まる

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「末端で働く人が切り捨てられる今の産業構造はおかしい」と話す土屋トカチ監督=大阪市内

映画「フツーの仕事がしたい」 神戸で公開

 一カ月の労働時間は平均五百時間で休日はほとんどなし。それと引き替えに手にした賃金は三十万円前後。横浜市のトラック運転手皆倉信和さんの二年間にわたる闘争を追ったドキュメンタリー映画「フツーの仕事がしたい」(土屋トカチ監督)は、映像版「現代の『蟹工船』」として反響を呼んでいる。劇中、過労で倒れ入院した皆倉さんはカメラの前でつぶやく。「フツーの仕事がしたい」と。(黒川裕生)

 皆倉さんは、好きな車にかかわる仕事がしたいと、高校卒業後は運送の仕事に就いた。撮影当時働いていた首都圏の運送会社は大手セメント製造会社の孫請け。セメント工場と生コンクリート製造工場の間をひたすら往復し深夜に帰社。一、二時間の仮眠の後、再びバラセメント車を走らせた。

 過酷な労働を強いながら、会社は業績悪化を理由に賃金を度々切り下げた。しかし皆倉さんはあまりの忙しさに立ち止まって考えることもできなかった。「このままでは死ぬ」と、皆倉さんが個人加入のユニオンに駆け込んだのは、二〇〇六年四月。ユニオンが土屋さんに交渉の様子を記録するよう依頼したのがきっかけで、この作品が生まれた。

 ユニオンへの加入、会社への通告、と始まった話し合い。交渉のテーブルには、「会社関係者」を名乗るこわもての男が同席し、要求を撤回するようすごんだ。皆倉さんの母親の葬儀会場にも、男は十数人を率いて現れ、皆倉さんを囲んで労組脱退を迫った。「撮るな」とすごまれながらも、傍らで土屋さんはカメラを回し続けた。

 京都府出身の土屋さんは、大卒後就職した映像制作会社を解雇された経験がある。最初はドキュメンタリーの観点から、中立を心がけるつもりだったが、皆倉さんの闘争を追ううち、経営側のあまりの理不尽さに気が変わった。「撮影でしかかかわれないが、力になりたいと思った」。いつしか皆倉さんに、会社の都合で解雇された自分の境遇を重ね合わせるようになっていたという。

 皆倉さんらは、大手セメント製造会社の前で葬儀場の映像を流したり、バラセメント車の過積載の実態を告発したりするなど、度重なる脅しに屈することなく、闘争を続けた。こわもての男らはその後、逮捕。業務を指示していた大手運送会社が非を認めて取引を打ち切ったため、皆倉さんの勤務先は廃業し、皆倉さんは別会社への就職が決まった。

 ラストシーン。ハンドルを握る皆倉さんが映し出される。運転手仲間と無線交信する際の晴れ晴れとした表情が印象的だ。

 〇八年四月にクランクアップした同作は、昨秋来の世界同時不況で雇用不安が増す中、上映館がじわじわ増え、共感の輪が広がっている。今年一月には元派遣社員を支援する東京・日比谷公園の「年越し派遣村」でも上映された。

 土屋さんは「労働環境を変えるには、少しの勇気があればいい。何かおかしいと思ったらまず声を上げて」と訴える。

 県内では十四日から神戸市兵庫区の神戸アートビレッジセンター(TEL078・512・5500)で公開。同日午後二時から、土屋さんを囲む交流会(無料)もある。

(2/16 09:30)


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