社会
公表基準に“抜け道” 神戸・再生医療事故隠ぺい
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先端医療センター(神戸市中央区)と神戸市立医療センター中央市民病院(同)が、医療事故を公表しないまま、特殊な測定装置を使った再生医療の1例目実施に踏み切っていた問題は、先端医療への信頼性を揺るがした。市は「患者の同意がなければ事故を公表できないとする基準に沿った」と説明。だがこの基準は、市が意図的に事故を隠す「抜け道」にもなり、情報公開のあり方を問う結果になった。(社会部 森本尚樹)
神戸市は二〇〇五年度から、公表基準に基づいて、二市民病院での医療事故を自主的に公表してきた。自治体が基準を定めて事故を自主的に公表するのは、前年度の兵庫県に次ぐ先進的な取り組みだった。
市の基準は、患者が死亡、または重い後遺症が出た事故で、医療側に重大な過失があるものはすみやかに公表する。医療側に過失があるものや社会的影響が大きいものは、三カ月ごとに自主公表することになっている。
だが、基準には「患者または家族の同意の範囲内で公表する」との条項が盛り込まれた。この条項によって、積極的な情報公開を進めるための基準が、不都合な事故を隠す“口実”にもなった。
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今回の事故で患者の家族は「示談で『公表しないでほしい』と市に持ちかけられ、示談書に『第三者に公表しない』という文言が入れられた」と話した。市は「口止めの事実はない」と説明しているが、「一般的に示談でこうした文言を入れることはある」とする。
結果的に患者側が事故を公表すべきだと思っても、この文言に束縛されることになる。
また市の病院事業には地方公営企業法が適用され、損害賠償額の決定に市議会の議決がいらない。このため事故が市会で報告されることもない。
一方、県病院局は、患者の同意の有無にかかわらず事故内容を自主公表する基準を定め、患者の同意が得られなかった事故も最終的に公表している。三百万円以上の損害賠償は、県議会の議決を必要とする条例を作っている。いずれも医療の安全管理の向上と病院運営の透明化のためだ。
神戸市も「病院運営の透明性を高め、内外に情報を提供することで事故防止を図る」としているが、「公表することで特定の個人が識別される可能性がある」と公表には同意が必要としている。
今回の事故で市は「患者側の不同意」を盾に、問題の事故の取材を拒み、以前は開示していた事故報告書の情報公開請求も内容を非開示とした。「事故は医療側の過失ではなく、公表の対象外で患者側に同意を取る必要がなかった。同意がない以上、公表できない」と市は説明する。
だが、関西学院大学ロースクールの松井幸夫教授(憲法)は「医療事故の公表は、再発防止に向けた公的な検証素材になるもので、医療の信頼性を高める上でも公益性が高い」と指摘する。
結局、異議申し立てを検討した市情報公開審査会が「事故内容を開示すべき」と答申したため、市は事故内容を開示する一方、基準の見直し検討に追い込まれた。
「個人のプライバシーに明らかに触れる情報以外にも当事者の同意を要するとするのは、情報公開制度の趣旨に反する」と松井教授の判断は明快だ。「当事者を『人質』に、当局にとって不都合な情報が隠される余地を生むことになる」と市の姿勢を批判している。
神戸市の再生医療事故隠し 先端医療センターと神戸市立医療センター中央市民病院は2007年11月、特殊な測定装置「ノガ」を使って心臓血管再生医療の1例目を実施。04年10月に「ノガ」による検査で患者が一時心肺停止状態になった事故を公表していなかった。
(2/14 14:25)

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