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■3 子供文化
伝統と出会い実結ぶ
赤、紫、青。原色の鮮やかな衣装がライトを浴びる。子ども二人の絶妙なせりふの掛け合いと、大きな身振りに満員の客席がわく。涙を誘う場面になると一転、客席は静まり返った。
兵庫県多可郡中町の中町北小学校の「播州歌舞伎クラブ」。昨年十二月、同町文化会館「ベルディーホール」に出演した。外題は「傾城阿波鳴門(けいせいあわのなると)―どんどろ大師お弓おつる別れの場」。
主役を務めた六年生の土田愛(12)は、一時間に及ぶ舞台を務めた。生き別れた娘と再会した母親役。素性を名乗ることができない母親が心を痛める場面で、自然と涙があふれた。練習では一度も出なかった涙だった。
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播州歌舞伎は江戸・元禄時代から伝わる。昭和の初めまでは多くの一座が西日本を巡業し、庶民の人気を集めていた。が、いまも残るのは中町の「山城家一座」一つだけ。
十二年前、中町北小に「播州歌舞伎クラブ」が誕生した。山城家座長の中村和歌若を師匠に迎え、三年生以上の児童が手ほどきを受ける。七年前にはクラブの卒業生らが、中町中央公民館にも播州歌舞伎クラブをつくった。伝統をつなげようと、二十代中心の若者が稽古(けいこ)に励む。
ベルディーホールの建設計画が持ち上がったのは、北小のクラブ発足と同じ時期。ホールのコンセプトを「芝居小屋」に据え、舞台袖(そで)の二階席をさじきに見立てた配置にした。
「伝統文化を一緒に作りたい。ホールが発信基地になる」。館長の奥村和恵(61)は、地域の核となる可能性を播州歌舞伎にみる。
奥村は約三十年前、神戸から夫と長女の三人で故郷の中町に戻ってきた。自然はあったが、子どもを取り巻く文化は貧しかった。
地元のおやこ劇場旗揚げにかかわる。ステージを楽しそうに見つめる子どものひとみ。「文化は暮らしの中に必要」。そのときの思いは今も変わらない。
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先月二十六日。文部科学省の指定を受ける「中町伝統文化教育推進会議」。
「ベルディーで発表すると、子ども目の輝きが違う。大きなホールでやり遂げることが自信になる」
校長や町教委職員ら委員の口は滑らかだった。
「播州歌舞伎はさらにレベルの高いステージを目指したい。ベルディーが拠点となり、外へも出す」
子どもと伝統文化が出会い、ホールが媒介する。それぞれの取り組みが地域に根づき、実を結ぼうとしている。
意見を聞きながら、今月いっぱいでホールを去る奥村の脳裏に、この十年がよみがえった。奥村は大きくうなずいた。(敬称略)
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