| 新潮流(8) |
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PFI/公共施設整備に民間の力/市民参加の可能性秘めて
神戸市灘区、摩耶山。山頂で寒風に身をさらす廃屋がある。市立国民宿舎「摩耶ロッジ」。震災でケーブルカーが休止し、今も観光客の足が途絶えたままだ。市はケーブルカーの運行が三月から再開するのを機に、新しい手法でロッジ再建に乗り出す。プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)。社会資本の整備に、民間の資金とノウハウを注ぎ込む仕組みだ。一九九九年のPFI推進法成立を機に全国で検討が進む。「公共工事の在り方に風穴を開けるかもしれない」。PFIの可能性に、官民の関心が高まっている。 ロッジは七〇年に開業。オープン当初は多くの登山客や観光客でにぎわったが、八〇年代末から赤字に転落。九三年には年間一千万円規模に膨らみ、財政を圧迫していた。 そこへ震災。六年がたち、市は観光客の回復が最も遅れる六甲摩耶地区の活性化に再び取り組む。しかし、財政事情は厳しさを増し、従来の外郭団体による運営には限界があった。 財政負担を緩和しつつ、集客にも民間のノウハウを導入する新しい手段として市が注目したPFI。「小さな政府」を目指した英国で九二年に始まり、今やインフラ整備の二、三割を占める。日本でも法に基づき、ごみ処理場や美術館整備など十二件の事業案が各自治体で進められている。 「観光面だけでなく、市民の健康づくりもサポートし、体験学習も可能な魅力ある宿泊施設を」。神戸市が提示した摩耶ロッジの再建に際しての注文である。 具体化のプランを提案したのは六社。昨年十月。地元住民も入った市の審査委員会は、ゼネコン大手鹿島建設の案を選んだ。 鹿島のプランは、現施設を南欧の別荘風に改修する。改修費は、市から二十年分割で毎年二千五百万円が鹿島に支払われる。従来の外郭団体方式なら、市が改修費五億を当初予算に計上しなければならなかった。 維持管理費は宿泊収入で賄い、鹿島にとっては、利用が収支ラインを上回れば、その分が利益になる。そこに民間の利潤追求の動機が働き、同社は旅行代理店最大手JTBの子会社と組み、客の呼び込みを図る。 「民間活力の導入」を掲げて、一世を風びした仕組みに第三セクターがある。民間と自治体が共同出資の会社をつくり、会社が資金を調達して事業を行う手法だが、その多くが今、経営不振に陥っている。 「今回のケースでは、今後二十年間のリスクと、経営が破たんする最悪の場合も想定し、責任を分担した」と神戸市。民間が事業採算性を厳しくはじいて事業に乗り出す点が、責任があいまいになりがちだった第三セクター方式と異なる。 「県内の自治体も年々関心が高まっている」。機運の高まりを指摘するのは、さくら銀行関西公共法人営業部長の西元秀(50)。同銀とさくら総合研究所が三年前に始めた県内の自治体向け「PFIセミナー」の参加者は年々増加。今年二月のセミナーには昨年の六割増しの約百人を見込む。 民間企業の研究も進み出した。関西経済連合会は、昨年七月にPFI研究会を立ち上げ、今年五月に提言を発表する。策定準備に忙しい事業推進第二部副部長、藤原幸則(43)は、「地域の既存施設を生かし、地元のNPO(非営利組織)や住民を巻き込むような方策に関心が高い」という。 「PFIは、広い意味で行政への市民参加のひとつの形だ」。市産業振興局長の鵜崎功(54)も可能性を語る。「問題は地元企業が参画できる事業を行政がどれだけ出せるか。地域の企業がノウハウを高めていくことも課題だ」 自治体、企業、市民。新しい協力の形を秘めてPFIが始動する。=敬称略= (おわり) ▽この企画は、記事を藤井洋一、山口裕史、宮田一裕、藤本陽子、桑名良典、大久保直樹、写真を立川洋一郎、小島大二が担当しました。
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