市庁舎見下ろすマンション
「神戸市役所を見下ろす超高層マンションは、いかがですか」
ダイレクトメールが配られたのは昨年末だった。三宮駅南のオフィス街。フラワーロードを挟み市庁舎と向き合う四十一階建て。計画戸数、二百八十戸。
「市役所が三十階。国際会館が二十二階。中央区では最も高いマンションです」。うたい文句通り、実現すれば、市庁舎を抜く高さ百六十五メートルの建物になる。
計画するのは大和ハウス工業(大阪市)。二〇〇五年完成を目指し、建築確認申請に向け需要調査を進める。
1LDKから5LDK、想定価格は二千万円台から一億円超。調査用の「参考プラン」には六甲や港を望むラウンジやジム、ミニシアターなどの設備が躍る。
「あなたは都市に何を期待しますか」。交通、買い物、活気…。資料は「都心生活」の利点を列挙する。
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都心のマンションへ移り住む。「都心回帰」が首都圏で語られたのは数年前。
ドーナツ化が進む東京で、臨海再開発を機に始まった回帰が今、関西圏へ波及する。地価下落で価格が下がり、企業リストラによる遊休地増が拍車をかけた。
大阪で昨年末着工した西日本一高い五十階建てマンションの土地は、商社が売却した大阪本社跡地だ。
神戸でも流れは見える。
四十一階建て予定地のすぐ西では一昨年、別の不動産業者がファミリー向けマンションを分譲。一部屋を残し四十一戸が売れた。
20%が一戸建てや別のマンションからの「住み替え」で、子育てを終えた「五十歳以上」が目立った。
「老後をにらんだ夫婦には便利さが魅力。今後も需要は見込める」と担当者。職住近接も注目を浴びる。
不動産経済研究所(大阪市)の統計では、神戸市中央区の分譲戸数は増え、二〇〇〇年には年間供給千戸を突破。兵庫、長田区でも震災前に比べ緩やかに増え、逆にニュータウンが多い西、北区は減少に転じた。
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副都心として震災復興再開発が進む新長田駅南では、マンション四百八十戸が分譲され、「市西北部から」だけで10%だった。六十歳以上の世帯主も三割近くに上る。
「坂道は買い物に不便。車の運転ができなくなったら、暮らせない」。水先案内人の石田忠(67)、佐和子(62)夫婦が転居を決めたのは昨春。今は須磨区北部、高倉台の一戸建てに住む。
高度成長に入った六〇年代。ポートアイランドなどの土砂搬出を機に開発された住宅地には働き盛りが移り住んだ。以来三十数年。 千五百人だった小学児童は、今や三分の一。六十五歳以上の高齢者世帯は22%で、市平均を五ポイント上回る。
借家で家を残しローン返済に充てる石田。「買い物や通院を考えると、新長田が一番。飲食店も多く、妻の負担も軽い」と考える。
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山を開き、宅地造成してきた神戸。重厚長大産業を支えた臨海部は空洞化が深刻化し、ニュータウンも若年層流出で空洞化が進む。
高倉台より一足早く開発された東灘区渦森台の一戸建ては高齢化率四割。市や地元が活性化を模索する。
「少子高齢化が進むこれからは、市内の住まいをどう循環して利用し、再生していくかが課題だ」
市総合計画課主幹の本荘雄一は「かすかな兆しだが、都心居住に糸口があるかもしれない」と言う。
一戸建て神話より、暮らしやすさ。豊かさの変容がほのかに見える。
今秋、新長田に移る石田は言う。「近くに駅があり、通院と買い物に不自由しなければ、それでいい。庭付きにこだわるより、安心です」(敬称略)
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