明日への模索  ―05 神戸市長選
 
2.人口逆流
(2005/09/30)

描けない「次」の都市像

 不動産会社の申し入れに、神戸市の担当者は耳を疑った。「計画を断念する。土地を寄付したい」

 神戸市北区の山林一七八ヘクタールを切り開き、千五百区画に約五千人が暮らす。一九七〇年代に描き始めた計画は今春、中止に追い込まれた。冷え込んだ神戸市郊外の住宅需要が回復しない、と見極めた結果だった。広大な山林は市有財産に変わった。

 震災前、神戸の人口は年一万人規模で拡大した。震災直後に市が策定した復興の骨格「第四次基本計画」は、震災で減った当時の人口百四十二万人が、二〇一〇年には百七十万人に伸びると想定した。

 しかし、市は今年まとめた中期計画で、同年の人口を百五十五万人と下方修正。最大の誤算は北区だった。震災後の二十三万人から二十八万人に伸びると見込んだが、実際は横ばい傾向が続き、二十三万人に大きく切り下げた。

 北区南部のニュータウンに立つ筑紫が丘小。児童の爆発的な増加に伴い、八七年に中学校を転用して開校した。しかし、まちの高齢化が進み、児童数はここ十年で四割以下に激減。四年生以外は一学年一学級にとどまる。

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 林立するビルを見下ろす高さ百五十二メートル。大和ハウス工業が今春、神戸市中央区の市役所前に完成させた高層マンションには、二百五十七室に約三千件の申し込みが殺到した。「予想をはるかに上回った」と大阪本店営業課長の長岡義人(38)。「東京、大阪のように神戸でも都心回帰が起こるか懐疑的だったが、市場調査で手応えを感じ、グレードを上げた」と明かす。

 都心が空洞化するドーナツ化現象から、人、モノ、カネが再び都心に逆流する「アンパン現象」が起きているという。中期計画では、北区とは対照的に、中央区だけが一万五千人の上方修正となった。

 「神戸中心部の土地は今、バブル再来の様相」とあるゼネコン関係者。まとまった土地が売りに出ればマンションデベロッパーが買いあさる。「路線価の二倍で買ったらしい」「三倍と聞いた」。そんなうわさが後を絶たない。

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 郊外から都心への人口逆流。銀行、証券会社が集まる神戸の金融街、中央区の栄町通にも最近、マンション二棟が完成した。いずれも銀行の支店跡だ。

 民間調査会社が夏にまとめた神戸のテナント空室率は、全国の主要都市十四地点でワースト2。数字の上では岡山や高松より深刻で、「神戸ではマンションしか買い手がつかない」との分析もある。

 「中心地は経済・産業の拠点。住まいは郊外」。まちの姿をそう描いてきた市幹部らの反応は複雑だ。まちが巨大なベッドタウンと化し、働き先が減るという不安。新たな人の流れが消費を刺激し、活性化につながるのでは、という期待。双方が入り交じる。

 市の長期計画づくりなどを担当する企画調整局長の大麻博範(58)も言う。「この現象が神戸にどんな影響をもたらすのか、見極めは難しい」

 震災直後は想定しなかったまちの変ぼう。日本社会が直面する人口減少社会。震災から十年を経た先の神戸の未来像はぼやけている。(敬称略)

 

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