ほんとうのじぶん ―性同一性障害の子どもたち

 
1.出会い (2006/07/31)

「統計」なく、貴重な友

性同一性障害と診断された2人の男児

 フリルが付いた洋服や靴下。肩まで伸びた髪。あどけない二人は、握手すると、照れくさそうにほほ笑み合った。

 七月初旬。性同一性障害と診断され、女児として通学している兵庫県播磨地域の小学二年優(ゆう)(7つ)=仮名=は、数百キロ離れた地で、同じ障害に苦しむ小学四年の春(はる)樹(き)(9つ)=仮名=に会った。

 心の性と身体の性が食い違う性同一性障害。二人は女の子の心を持つ男の子だった。

 「同じような子どもがいるとは知らなかったし、そんな子が生きていること自体、感動した」と優の母。六月、取材で知った春樹の存在を伝えると、母子ともに「会いたい」と強く望んだ。

 優の障害について、親類や友達に相談したが、「理解してもらえることには限界があった」という。「当事者同士でなければ共感できないこともある。(春樹は)優と生涯支え合える友達だと思った」

    ◇   ◇

 春樹は、四歳のころから女の子言葉を使い、女児の服を好んだ。小学校の入学式こそ「戸籍上は男だから」と男児の格好で出席させられたが、翌日から女児の服で通学。母が保護者らに事情を説明し、女児として暮らしている。

 昨年引っ越したときには、同じ小学校へ校区外通学するため、役所に出向いた。提出書類の理由欄に診断されたことを書き、性別を記入しようとすると、春樹が「絶対男に丸を付けないでよ」と言った。母は「これは正式な書類だから」と、男に丸をした。書類が職員に渡るのを見た春樹は「男じゃない」と泣いた。

 「分かったよ。ここは消すからね」。職員は、春樹の目の前で丸を消したが、母に許可を取り、春樹から見えない所で再度書き入れた。母が「こういう児童はほかにもいるんですか」と聞くと、「ええ、いますよ」。職員は、あっさり答えた。

 国内で、性同一性障害の子どもに関する統計資料はない。だが、岡山大学医学部の調査では、同学部ジェンダークリニックを受診した六百三十一人の性同一性障害者のうち、四百九十六人(約79%)が、小学校高学年までに性別の違和感を自覚していた。

 教育行政の記録に、そういった子どもたちが登場することはほとんどない。優の受け入れについても、当初は地元の教育委員会から県教委への報告はなく、春樹の場合は学校内だけで処理された。

 性同一性障害の子どもへの対応は、プライバシーへの配慮もあり、外には出にくい。保護者が情報交換する窓口は、ほとんどないのが実情だ。

    ◇   ◇

 二人の母は、子どもたちの学校での生活ぶりなど、三時間にわたって話し合った。最初は人見知りしていた優と春樹も、トランプ遊びですっかり打ち解けた。また会うことを約束し、駅の改札で、手を振って別れた。

 優の母は帰宅後、春樹の母からメールが入っていることに気付いた。

 「あまり頑張りすぎないで」

 同じ子を持つ母の言葉は、張り詰めた心に優しく染みわたった。

 ※文中の仮名は敬称略

(霍見真一郎)

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