(掲載日:2006/08/17)

「官」から「民」へ指定管理者制度 公募で選定まだわずか
 「官」が独占してきた領域に「民」が参入できる指定管理者制度。公民館や図書館など公共施設を、民間企業や民間非営利団体(NPO)が管理・運営できるようになった。兵庫県内でも次々と制度が導入されているが、「公募」という土俵で競うケースはまだ少ない。コスト削減の意識や官民の役割分担など、自治体の考えにもばらつきがある。「公共」とは何か。制度の導入は、根本的な問題を突き付けている。(徳永恭子、宮本万里子)
 
県内自治体を調査/実績なし9市6町「応募者に魅力ない」
指定管理者の選定状況
「公募せず」は、従前と同じ団体を指定管理者に選んだケース。「直営など」は、公募せずに従前と違う団体を選んだケースなどを含む。

 神戸新聞社が兵庫県と県内四十一市町に実施したアンケートでは、公募で指定管理者が選ばれたのは、対象となる約九千四百施設のうち五百十三と少なく、公募実績がない自治体は九市六町で都市部以外に集中=表。公募しても競争率が非常に低い自治体があるなど、制度導入の効果にばらつきがうかがえる。

 公募対象施設のうち、公募実施の割合が高いのは、@篠山市35%A神戸市33%B西宮市28%。一方、公募実施による平均競争率は都市部で高いのが特徴。

 神戸市では十二団体が応募したこともあり、平均競争率は四倍。尼崎、姫路市も公募の実施率は1%未満と低いが、競争率は尼崎が七・五倍、姫路が五・四倍と高い。

 これに対し、公募実施率がトップの篠山市の競争率は一・二倍。応募がなく再公募したケースもある。宍粟市も対象となる三十施設のうち七施設で公募したが、いずれも従前の運営団体しか応募がなかった。

 公募実績がない自治体の大半は、理由について「集客が見込めないなど応募者に魅力がない」「利用者のほとんどが地域住民で、公募になじまない」などを挙げた。

 制度の狙いは、公共施設に民間の発想を生かし、サービス向上やコスト削減を図ること。しかし、公募に積極的な篠山市の担当者は「競争がほとんど発揮されない中で、どれほど効果があるか疑問」と話している。



市営駐輪場管理のCS神戸

委託費低く「苦難の連続」/「NPOの良さ発揮したい」

指定管理者となった神戸市営駐輪場で自転車を整理するCS神戸のスタッフ=神戸市東灘区住吉本町

 真夏の太陽が照りつける中、JR住吉駅前の駐輪場で、黙々と自転車を整理する男性がいた。青い上着の背中には、「CS神戸」の文字がある。

 NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(CS神戸)は昨年八月、同駅前の神戸市営自転車駐輪場七カ所の指定管理者として業務を始めた。事業本部長の国枝哲男さん(55)は「苦難の連続だった」と振り返る。

 指定管理者の公募は二〇〇四年秋。CS神戸は「地域の人の顔が見える駐輪場はNPOに適している」と手を挙げた。

 サービス内容や金額などの総合評価で一位となったものの、委託金額は最も低かった企業の提案額に合わせ、25%下げるよう要請された。さらに保証金として二百十八万円を求められた。スタッフの時給を下げてやりくりしたが、「資金力の弱い大半のNPOでは無理」と国枝さんは漏らす。

 駐輪場七カ所の収容台数は約千二百。二十人で、毎日午前六時半から午後十時までの業務を切り回す。工夫も凝らす。利用者にはあいさつ。暗がりにライトを据え、花のプランターを置いた。

 四月には、新ルールを設けた。料金を払わずに止めると警告札をつけ、違反を重ねると強制撤去―。だが、市からクレームがついた。「住吉だけ勝手なことをしないでほしい」。「何のための指定管理者か」と反論し、ルールは残った。

 CS神戸は東灘区民センター小ホールの指定管理者でもある。国枝さんは「行政の下請けではなく独自性を発揮できる制度にすべき。資金力や情報不足、他業界とのつながりの少なさなど、NPOの弱点を補う仕組みもいる」と提案する。


兵庫県立大助教授(公共経済学)
赤井伸郎さんに聞く

効果試算し提示を

 指定管理者制度を進める上で大事なことは、透明性の確保。管理者を公平に選ぶのはもちろんのこと、選定の方法や過程、公募しなかった場合の理由などは、市民に公開しなくてはならない。

 ただ、そこまでノウハウを持つ自治体はまだ少なく、全体的な公募率の低さにつながっている。自治体規模の違いなどによって制度導入の進み具合に差があり、遅れている自治体には国による支援も求められる。

 また、制度を活用するからにはその効果を試算し、明らかにすべき。メリットが明確でない自治体は、制度の意義を踏まえて取り組んでいるとはいえず、市民への説明責任を果たせていない。

 一方で、公募の際、首長や助役、議員が役員を務める会社や自治体の外郭団体を対象から外す対策は進んでいない。「市長が理事長になっている財団法人を審査で落とせるのか」と疑問を持つ市民は多いだろう。公平性を保つため、そうした団体は排除した方がいい。

 制度の狙いは、民間のノウハウを公共施設の運営に生かし、市民サービスの向上やコスト削減につなげること。ただ、コストさえ低ければいいのではないし、従前の質を必ず維持しなくてはいけないわけでもない。本当に必要なことは何か、あらためて多角的に考えることが重要だ。


NPO参入全施設の4.1%
ハードル高く

公募で決まった指定管理者の内訳
「その他」は、社会福祉法人や学校法人、共同事業体など。

 地域に根差したまちづくり活動が持ち味のNPOだが、指定管理者制度での参入事例はまだまだ少ない=表。

 アンケートによると、公募した県と二十市六町のうち、NPOが選ばれたのは、神戸、西宮、伊丹、宝塚、高砂、尼崎の六市と、稲美、播磨の二町に計二十一施設。公募で選定した全施設の4・1%にすぎない。

 施設の種類は、駐輪場や区民センター、公民館、キャンプ場など。稲美町では図書館を管理運営している。

 選ばれたNPOは、人数・事業規模の大きい団体や、当該施設で以前から活動している団体などが大半を占める。

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