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安藤建築の「集大成」 県立美術館を読み解く
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2003/07/18 コンクリートの打ち放し建築が特徴的な安藤忠雄さんは、日本を代表する建築家の一人だ。米建築家協会最高賞の金メダルを受けるなど、「ANDO」の名は世界に鳴り響いている。その安藤建築の「集大成」といわれるのが、昨春、神戸市内にオープンした兵庫県立美術館「芸術の館」。しかし来館者や関係者からは「分かりにくい」「使いにくい」との声も漏れ、建物の評判は必ずしもよくない。折しも同美術館では「安藤忠雄建築展」が開催中。そこで二人の建築家を案内役に、作品「兵庫県立美術館」を読み解いてみた。(三上喜美男) 「分かりにくい」 「迷って疲れる」 「でも、美しい」 臨海部の工業地帯を再開発した神戸市中央区のHAT神戸(東部新都心)。県立美術館はその地に約三百億円の総事業費を投じ、「阪神・淡路大震災の文化復興のシンボル」として建設された。すぐ南が海。北側には六甲山を望む。 訪れてみて誰もが実感するのが、大きさだろう。約二万七千五百平方メートルの延べ床面積は、美術館では全国二番目。旧県立近代美術館と比べると、展示スペースは約二・七倍。安藤さん自身の美術館・博物館の中でも、設計中のピノー現代美術館(パリ)を除けば過去最大の規模となる。 建物はコンクリート造りの展示室の南半分をガラス、北半分を亜鉛メッキの金属板で覆った二重構造。巨大な箱が東西に三つ並んだ外観だ。建物の下半分は御影石の壁面。御影石は震災前の阪神地域の「過去」、ガラスは復興後の「未来」を象徴しているという。 □大き過ぎる「堂々としている。いや、し過ぎているな」 安藤さんと親しい建築家・渡辺豊和さん(京都造形芸術大教授)は、第一印象をこう語る。 渡辺さんによると、安藤建築の持ち味は、コンクリートを駆使して大胆に空間をつくる軽快さと明快さにある。ところがこの建物からは、そのどちらもがあまり伝わってこないという。 「その最たるものが、下部の御影石です。重苦しくて、上部のコンクリートやガラスの構造とマッチしていない」 全体の空間構成でも、その単調さを指摘する。 「これだけの規模の建築を一つの発想だけで造るのは難しい。人を飽きささないためにも第二、第三の主題がいる。そこを明快に割り切るのが安藤建築だが、持ち味を生かすには、建物の規模がちょっと大き過ぎたようですね」 安藤さんがほぼ同時に手がけたのが米国テキサス州のフォートワース現代美術館。やはり箱型のコンクリートをガラスで覆った二重構造だ。周囲は水をたたえた人工池。コンクリート、ガラス、水の調和を、渡辺さんは「素晴らしい」と絶賛する。ただし建物の規模は兵庫県の半分程度だ。 ◇デザイン優先ところで、県立美術館では、利用者から「疲れる」との声を聞く。これも広いからなのか。 「公共建築は使う人の意見や機能を優先させるのが当然」。そう語るのは元兵庫県職員の建築家・竹山清明さん(京都府立大助教授)だ。 在職当時、ピッコロシアター(県立尼崎青少年創造劇場)の設計を担当した。利用者のニーズをつかむため、演劇関係者の声を三カ月かけて聞いて回った経験を持つ。 その竹山さんには「あの建物は機能よりデザイン優先」と映る。 「例えばルーブル美術館。伝統の宮殿建築の真ん中にガラスのピラミッドを置いて話題になったが、中に入れば、全体の展示構成や自分の位置が直感的に分かる。全体が見えなくても、迷わない構造になっている。県立美術館にはそれがない。どこがどうなっているか分からないから、来館者は疲れを感じる」 ▽造形美と精神性とはいえ、安藤建築ならではの造形美が感銘を与えているのも事実だ。らせん階段の円形テラス。階段が交錯する吹き抜け。海を一望する展示室周囲のガラスの回廊…。 特にガラスの回廊は「日本の縁側にも似た空間」であり、都市の中に生まれた「空白」の場として精神的な意味を持つと、建築評論家で多摩美術大助教授の飯島洋一さんは評価する。 県立美術館の外壁にはツタが伸び始めた。数年後には御影石の壁がすっぽり緑で覆われ、建物は新しい表情を見せる。 「地元で親しまれている阪神甲子園球場をイメージしています。この建物も長い目で見て、みんなで守り、育ててほしい」と安藤さんは話す。 「安藤忠雄建築展2003 再生―環境と建築」は二十一日まで。TEL078・262・0901 | |
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