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「無限カノン」3部作完結 作家・島田雅彦氏に聞く
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2003/10/23 「自らの代表作として残すべく書いた」。“史上最強のラブストーリー”と銘打った三部作「無限カノン」を完結させた作家島田雅彦氏。長崎の芸者・蝶々(ちようちよう)の悲恋に始まり、ひ孫カヲルの禁断の恋まで、血族四代にわたる恋愛と放浪の物語だ。第一部「彗星(すいせい)の住人」から三年。第二部「美しい魂」、第三部「エトロフの恋」を同時発売した島田氏に聞いた。 才能を値踏みする賭け/自らに課した恋愛大長編 第一部は、一族の歴史から主人公カヲルの幼年時代まで。アメリカ人士官に捨てられ、自害した芸者・蝶々。遺児JBはスパイとなり、日本や満州をさまよう。その息子蔵人は音楽家となり、マッカーサーの愛人女優と恋に。さらにその子カヲルもまた、危険な恋に踏み出していく―。激動の二十世紀を恋愛で語る野心作だ。 「これまで恋愛小説をあまり熱心に書いてこなかったので、作家の一つの義務として、大長編を自らに課した。恋とは、そこに相手がいなくともよい。遠くからあこがれるのも恋。大女優にでも歴史上の人物にでも、恋することは可能です。その中でなお、小説でなくてはできない恋、私にしか書けない恋を考えた」 第二部では、十八歳になったカヲルが、運命の女・不二子を追って渡米。カウンターテノール歌手となり、奇跡の美声で女たちを魅了するが、不二子の心だけはままならない。そこへ現れるのが手ごわすぎる恋敵。時の皇太子だった。 「命懸けの思想なんてものがあるとしたら、やはり日本では、いまなお皇室をめぐる考え方に行きつく。敬うにしろ、その存在を問い直すにしろ、日本人が自ら考え、答えを出すべき唯一の問題だろう。同時に言論のタブーも、多くは皇室から生まれている。たとえ危険を冒しても、作家として自由な言論の限界を知っておきたかったし、今後の議論の契機ともなれば幸いだ」 四代にわたる重層的な劇構造、さらに禁忌を犯す恋という主題は、三島由紀夫の遺作となった「豊饒(ほうじよう)の海」四部作を思わせる。ともに四十歳を控えた時期に構想されたという点も重なっている。 「私自身も早く世に出たがゆえ、この年齢では三島が何を書いていたか、常に意識してきた。ついに『豊饒の海』の年になり、私にも書けるか、自らの才能を値踏みしてみたのだ。作家には時々、そういう大博打(ばくち)が必要だ。三島は死んだが、私はまだ死ねない。生きて、書き続けるための賭けだ」 第三部は題名通り、北方のエトロフ島が舞台。時代も十余年先の近未来に移る。そこで太古の記憶を宿した自然に抱かれる中、カヲルは遠く離れた不二子や死者たちと邂逅(かいこう)。華麗な一、二部からは、明らかに異質な手触りがある。 「私も十一年前、エトロフへ渡ったが、古代の想像力や自然観が息づく不思議な地だった。優雅な憂うつ、心地よい憂うつとも呼ぶべき、北方独特のメランコリーがあり、それが厳しい自然の中で生き残る知恵となる。当初の構想とは離れたが、自分なりに三島を超えて書き続ける私にとっても、違う作風への入り口になった」 「彗星の住人」は二千円、「美しい魂」は千八百円、「エトロフの恋」は千五百円。いずれも新潮社刊。 | |
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