「日本マンガ学会」京都で大会

  2005/06/27


 戦後六十年、漫画は子どもたちに何を語りかけてきたのか。「マンガと戦争」をテーマに掲げた「日本マンガ学会」の第五回大会が、京都市左京区の京都精華大でこのほど開かれた。国内外から集まった漫画家、研究者らが、戦後の戦記物ブームや海外作品における戦争の描き方について報告。そんな中、戦時中の少年・少女雑誌の内容を比較し、性別ごとに異なった国民の役割を説いていたという興味深い指摘もなされた。(平松正子)


戦時中の雑誌を比較/少年少女に異なる理想像

 「少女雑誌と〈戦争〉」と題した報告で、戦時下の漫画のジェンダー教育機能に言及したのは、関西大大学院生の増田のぞみさん。一九三〇年代から終戦までの「少女倶楽部(くらぶ)」「少年倶楽部」を取り上げ、その掲載漫画を中心に読み比べた。

 例えば「少年倶楽部」掲載の「その意気よろし」「ダンちゃんの荒鷲(あらわし)」には、友人と剣道の腕を競ったり、新兵器を発明したりする利発な男児が登場。だが「少女倶楽部」の「仲よし手帳」「初収穫」のヒロインらは、疎開先で田んぼに落っこちたり、せっかく育てた豆の食事会に友達を呼び過ぎて数が足りなくなったり。常にうっかり失敗してしまう。

 また少女向けの記事では、戦地への慰問品の送付を強く推奨。特に「守るべき純真なもの」の象徴として、慰問人形の作り方が毎号のように載せられたという。

 増田さんは「賢く役立つことを求められた少年に比べ、少女らはあくまで銃後を守り、かわいらしく兵士を励ますべき存在。その性別による役割の違いは、昨今の漫画表現にまで影響しているのではないか」とみる。

 一方、伊藤公雄・京都大教授は自身の読書体験も交え、「男の子文化のなかのミリタリー・カルチャー」について考察した。

 これによると、好戦的印象が強い戦前の軍事小説には、実は過剰な暴力を戒めるヒューマニズムや、男の友情をうたうホモエロティシズムが描かれていた。戦後一九六〇年代に流行した戦記漫画では、集団から個人の戦いに変化。さらに八〇年代以降、作中の戦争は身体性を失い、鑑賞の対象になったという。

 「皮肉にも社会や学校が抑圧するたび、戦記物のブームが起きている。ミリタリー・カルチャーを安楽死させるには、それがなぜ少年にとって魅力的なのか分析が必要だ」と同教授。

 このほか、袖井林二郎・法政大名誉教授が、アメリカで活躍したユダヤ人の戦争漫画家アーサー・シイクについて紹介。漫画家長谷邦夫さんは実作者として、戦後の戦記漫画ブームを振り返った。フリーライター小田切博さんは、米中枢同時テロ以降のアメリカのコミック・ジャーナリズムを論じた。


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