あやとりは世界の伝承文化
2007/05/05

あやとりは、日本の女の子の遊びである―。こう考えるとしたら、それは完全な間違いだ。「日本の」も「女の子の」も「遊び」も、実はすべて誤っている。あやとりは世界各地で伝承され、民族によっては遊びの枠を超えた存在でもあるのだ。大阪市中央区のINAXギャラリー大阪で開催中の企画展「世界あやとり紀行」は、手のひらの中で生まれる、このはかない宇宙が、いかに多様であるかを実感させてくれる。(武藤邦生)


大阪で企画展

 あやとりはオセアニア、北南米、アジア、アフリカなど、広い地域で伝承されている文化だ。主に無文字社会で伝承され、地域性や民族性を反映するものであるが、近代文明の発達とともに消滅するケースも多いという。現在は、一九九四年に組織された国際あやとり協会(ISFA)が世界中のあやとりの収集をしている。

  特に数多くの種類が残っているのが、オーストラリアや太平洋諸島。これまでに世界で収集された三千種のあやとりのうち、二千種以上がこの地域のものという。

  民族の中でも重要な位置を占めており、オーストラリアの先住民アボリジニは祭りの儀式の場で、あやとりの創始者とされる姉妹の壮大な物語を手の中で作り上げる。ニュージーランドの先住民マオリでは、神話の中であやとりが語られている。

  一方、アラスカやカナダ、グリーンランドなどの極北のあやとりは、動的で芸術的だ。数あるあやとりの中でも「最高傑作」とも評されるカナダの「耳の大きな犬」は、ひもを引くと犬がするすると“走る”。カナダからアラスカにかけて広く伝承されている「白鳥」は、完成後、小指のひもをはずすと、白鳥が飛び立った後の池が出現する。一本のひもで、紙芝居を見るような面白さを演出する。

  日本を含め、東アジアで特徴的なのは、代わる代わる相手の糸を取る「二人あやとり」だ。十七世紀の中国でその存在が最初に確認されている。

  またアフリカには、占いなど呪術(じゅじゅつ)的要素を含んだあやとりがある。

  ISFAの前身である「日本あやとり協会」を設立した野口廣・早稲田大名誉教授は数学者だ。あやとりの調査は、民族学者の領域のようにも思えるが、理科系の研究者が関心を持つケースも多いという。

  なるほど、パプアニューギニアの「天の川」は、同じ動きを繰り返すことによって結び目の数が倍々と増え、逆の動きをするとそれは半分へと減る。そこには数学的な美が確実に存在する。

  あやとりは、遊びであり、神話であり、呪術であり、そしてサイエンスでもあるのだ。

  同展は二十五日まで(水曜休館)。世界各地のあやとりを写真パネルで紹介、ひもで作品を再現したものも。関連文献も展示している。無料。同ギャラリーTEL06・6733・1790


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