(掲載日:2003/05/04)

夢に挑み社員と成長

 二〇〇五年度中に、人工衛星を打ち上げる―。東大阪の取り組みが、日本の中小企業に希望を与えている。その名も「まいど1号」。戦後、欧米を激しく追い上げた日本の製造業も、今は中国などアジアの猛追を必死に耐えしのぐ状況。だが「逆境と戦うところに成長はある」と、航空機部品加工・アオキ社長の青木豊彦さんはいう。米ボーイング社の認定も受けた技術力。明確な目標を掲げ、賛同する多くの力を結集する戦略で、夢の実現を目指す。
(松井 元)
狙いは宇宙。人工衛星で中小活性化の花火師に。

「衛星事業で東大阪に若者を呼び込み、ものづくりのアメリカ村にしたい」。打ち上げが成功し、太陽光を浴びながら軌道上を回る小型衛星「まいど1号」の姿に思いをはせる=東大阪市高井田中5、アオキ本社(撮影・藤家 武)
 東大阪の中小企業数はピークの一万から八千を切り、減少傾向が続く。

 「二年前、商工会議所に、東大阪を明るくする花火師になれ、と言われましてね。歯ブラシからロケットまで―といわれる中小製造業の集積地。そこでロケットをつくろうと思ったが、専門家から規制もあって無理といわれた。だが小型衛星なら可能という。ならば、と決めた」

 五十センチの箱型衛星開発に、十億円費やす。

 「昨年末に地元六社で、東大阪宇宙開発協同組合を設立しました。宇宙開発事業団や東大などの技術協力も得ている。大手のスポンサー候補も出てきた。みんなが応援団という感じ。涙出まっせ、ほんまに…」

 世界的な価格競争でメーカーが生産拠点を中国へ移転。環境は厳しいが。

 「台湾の経営者に『日本の中小企業は、大手など国内市場に頼りすぎだ』と指摘された。海外で市場を開拓しないから、英語を勉強しない。国際感覚も足りない」

 「実際にあった話だが、日台の中小企業が日本の大手にボルトを納め、返品になった。日本はスクラップにし、台湾はそのまま南米に輸出した。国内大手はロボット組み立てだからボルトも高い精度を求めるが、南米はまだ手作業なので十分使える。買い手を知ってるんです。日本は、足元で見直すべきことがまだまだある」

 日本の技術は世界に勝ち続けられるか。

 「社員にうちの強みは何かときかれると、お前らや、と答える。バブル期に3Kといわれ、若者が中小製造業に来なかった。合コンで女の子に勤務先を言えないから、と。ずいぶん悔しい思いをした。社員が誇りを持てる会社にしたい―。この気持ちをばねに、社員とともに九年がかりでボーイング社の認定にこぎつけた。全員が、部品の役割から飛行機の生産計画まで、すべて把握するまでになった。農機具から始まった会社が建機、油圧などを経て飛行機まできた。職人の腕も進化した。日本の中小企業も同じで、技術は挑戦です。目標を決め挑む気持ちがなければ、必ず低下する」

 そして、次は宇宙を目指す。

 「本業の航空機部品が米中枢同時テロの影響で厳しいが、今日儲(もう)からなくても、五年後に役立つ人材が育ってれば怖いことない。逆に今儲かっても、後を継ぐ人間がおらん方が怖い。衛星のおかげで、大学院生など若者が東大阪の中小企業に就職してくれている。産学交流も進む。若い頭脳と職人の技をつなげば、新しい強みが生まれてくる。もちろん最後は、いかに儲けるか。打ち上げまでに、衛星を使ったビジネスを考えんとあきませんわ」

 あおき・とよひこ  大阪市生まれ。大阪工業大学付属高校卒。1965年、父親が創業した青木鉄工所(現アオキ)入社。95年3月から現職。2002年12月から東大阪宇宙開発協同組合理事長。好きな言葉は「夢が人生をつくる」。趣味のゴルフは多忙で行けないが、「人工衛星というもっと面白い遊びを覚えた」
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