先駆け実現へ模索続く

  
 「まだ一つの実践例もないんですよ」

 県産業労働部の担当職員が残念そうに話した。

 一九九九年十二月。貝原俊民前知事ら県、経営者協会、連合兵庫のトップが県庁の一室でがっちりと手を結んだ。不況や震災後遺症で失速する兵庫経済。悪化する雇用環境の改善を図り、三者で合意したのが「ワークシェアリング」の推進だった。

 労働時間の短縮などで仕事を分かち合い、人を減らさずに雇用を維持する発想。官労使一体での取り組みは全国に例がない。合意項目には将来の雇用の流動化などを見据え、労働者の能力を高める職能訓練の実施や在宅勤務など多様な働き方を創造していくことなども盛り込んだ。地域雇用の全国モデルとすることを目標に掲げた。

 企業への説明、アドバイザーの派遣…。合意からの足跡を振り返り、関係者の言葉はさえない。

 企業「総賃金コストの削減につながらない」

 労組「時短に伴う賃金減少分を助成すべき」

 県の調査では労使とも七割以上が導入に消極姿勢を見せた。震災の“痛み”を経てこそ実現した取り組みだが、日増しに高まる企業への経費削減圧力と労働者の生活防衛意識の前に「労使協調」の屋台骨が揺らぐ。

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 県は震災後、ワークシェアリングの推進などで雇用維持を図る一方、開業支援を通して新しい雇用の場をつくる施策を展開してきた。

 九六年度からは、新産業創造キャピタル制度を他の自治体に先駆けて導入。優れた技術力やアイデアで新事業を展開しようとする起業家に資金支援を行うもので、二〇〇〇年度までに自治体が関係する投資制度で全国一の百三十六件を認定した。投資総額は二十七億円を超え、計八百三十八人の雇用を生み出した。

 兵庫型ワークシェアリングの推進、新産業の開業支援。震災の直撃を受け、最悪の雇用環境の中で県が打ち出してきた施策は、国内の現状に先んじたものだ。雇用問題は今や労使間だけでは太刀打ちのできない事態にまで発展してきた。自治体や国が施策展開で非常事態をどう回避するのか。「兵庫モデル」の成否は、まさにその試金石となる。(経済部・雇用問題取材班)
 
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