3.企業誘致へ最後の選択(2003/06/13)
神話崩れ売却から賃貸へ/成否は自治体財政に影響
相次ぐ撤退で育成に軸足
 
 土地神話とともに崩れ去ったバブル経済は、各地につめ跡を残した。雑草が生え放題の産業団地もその一つだ。

 「もう土地に担保価値はない。この不況下、賃貸が当たり前でしょう」

 訪問先の企業の担当者からそう言われるたびに、加西市商工観光課長の植田通孝(53)は返す言葉を失った。

 兵庫県土地開発公社と同市の担当者らは昨年度、企業誘致のため全国の約二百二十社に足を運んだ。発送したダイレクトメールは約二万通。反応は鈍かった。

 加西市の加西南、東の両産業団地は、今回の特区認定で「産業集積特区」の対象区域となった。これまで用地は売却しか認められなかったが、特区内では賃貸も可能になる。

 今も南団地(十区画)に進出したのは、漢方薬メーカーのツムラ(東京)など二社だけ。東団地(二十四区画)は昨年三月の完成から空き状態が続く。県、市は独自条例で税優遇を打ち出したが追い風とはならなかった。「もう賃貸しかない」。現状の打開策として要望した特区認定だった。

 市は、仮に全区画が埋まった場合の経済効果を試算した。五年間で二千人の新規雇用が生まれ、六百億円の工業出荷額の増加を見込めるという。

 現在、約四十社と交渉中だが、認定後、早くも六社から問い合わせが舞い込んだ。「税収と新規雇用の増加、中小零細企業のビジネスチャンス拡大…。地域経済の沈滞ムードを吹き飛ばすきっかけになれば」。植田の前にかすかに光明が差し始めた。

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 「都市近郊型産業集積特区」に指定された高砂市の工業団地「高砂工業公園」も同様の事情を抱えていた。市土地開発公社は昨年三月、十六ヘクタール・五十区画分を造成したが、進出した企業はゼロ。整備に先立ち、一九九六年に行ったアンケートでは、約三十もの企業が進出を希望していた。

 土地を“塩漬け”にはできない。市公社の借入残高は約九十三億円。企業誘致が進まなければ、債務保証する市への余波は避けられない。賃貸でも工場立地を優先させることは自明の理だった。

 一平方メートル当たりの分譲単価は約五万円。賃貸なら年間千七百円。市公社は初期投資の安さをアピールする。「問い合わせも、最近は賃貸に関するものばかり」と副理事長の鈴木正典(57)。賃貸で近く入居しそうな企業が、ついに二社現れた。

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 情報インフラを活用して企業誘致を狙うのは「ITベンチャー育成特区」に認定された洲本市。ケーブルテレビ用に敷設した光ファイバー網の一部を民間に貸与する。

 通常、基幹通信回線を貸し出せるのは「第一種通信事業者」だけ。特区では資格要件が緩くなり、自治体にも同事業者への門戸が広がった。

 すでに、市は中心部にある空きビルを確保し、IT関連企業の拠点を構えた。ソフト開発会社や接続業者など四社が入居し、このうち二社が事業計画も発表済みだ。

 「もう大型工場の誘致は難しい」。市長の中川啓一の脳裏には、相次ぐ工場撤退、人口減などで活気を失った島内事情が去来する。「特区認定は格好のPR材料。『ITといえば洲本』。そう言われるようにしたい」。

 自治体が望んだ条件は一応整った。企業側の動向に注目が集まる。

=敬称略=

 
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