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復讐の連鎖断つ母性
デビュー作「Helpless」、カンヌで絶賛された「EUREKA〈ユリイカ〉」に続き、青山真治監督が故郷・北九州市を舞台に撮った新作。今回は母と息子をテーマにした、濃密な人間ドラマ。幼いころ自分を捨てた母親への復讐(ふくしゅう)を謀る息子にアウトローの孤独をにじませ、屈折した母性へのあこがれを、鋭い人間観察で魅力的に描く。
小さな運送会社を経営する間宮(中村嘉葎雄)は、バスジャック事件の人質だった梢(宮アあおい)や、借金取りに追われる後藤(オダギリジョー)ら、行き場のない人たちを住み込みで雇っている。
ある日、間宮の妻・千代子(石田えり)が前夫との間にもうけ、幼いころ捨てた息子・健次(浅野忠信)が現れる。千代子は健次と、その妹分で知的障害者のゆり(辻香緒里)を会社に住まわせる。楽しげに働くふりをしながら健次は、千代子への報復の機をうかがい、やがて異父弟を陥れる。
家族や社会とのしがらみに背を向ける健次。狙い通り異父弟を破滅させるものの、その結果、自身も追い込んでしまう展開が皮肉だ。薄っぺらい善人ぶりで、母の目をごまかそうとする浅野の演技は絶妙。息子を許し、復讐の連鎖を断つ千代子からは、母性愛だけでなく、人間としての大きさ、したたかさが漂う。すべてを包み込むような、石田の微笑が印象的だ。
登場人物らの複雑な内面を、たわいない日常会話の積み重ねで、徐々に浮かび上がらせる脚本が巧み。重いテーマにもかかわらず、どこか温かくのんびりした北九州弁の響き、おとぎ話のようなラストがうまく軽みを持たせ、バランスを取っている。
二時間十六分。十五日からシネ・リーブル神戸などで公開。
(片岡達美) |