NANA―ナナ (2005/09/02)

 

対照的な2人の友情

 二千三百万部を超える大ヒットとなった矢沢あい原作の青春コミックを、「アベックモンマリ」などの俊英、大谷健太郎監督が映像化。才人のイメージの強い大谷監督だが、今回は職人的仕事に徹し、オーソドックスな手法で、原作の世界を忠実に再現している。

 主演の中島美嘉、宮崎あおいのほか、松田龍平、成宮寛貴、玉山鉄二ら、美形ぞろいの豪華キャストで、“立体少女漫画”ともいうべき出来。東京で共同生活を始めた、同じ名前の二十歳の女性二人の夢と友情を、ロマンチックで劇的なラブストーリーを絡め、生き生きと描き出す。

 不幸な生い立ちだが、野良猫のように自由で誇り高いナナは、プロのロック歌手を夢見て上京。「てめえの男だろ、自分で取り返せ!」などと言葉遣いも不良っぽく乱暴で、性格も“男前”。一方、恋人を追って東京へ出てきた奈々は、人懐っこく純粋で、“天然ボケ”が入った手のかかる小犬のよう。ミーハーで、少女趣味、まだ大人になりきれない。正反対の二人の個性のズレが笑いを呼ぶ構造は、昨年ヒットした「下妻物語」に少し似ている。

 非凡な音楽の才を持ち、夢へと一途(いちず)に向かうナナは、いわば「非日常」の存在。そんな彼女を、ごく普通の恋や仕事に生きる「平凡」派の奈々の目で、間近から見つめるという語り口がうまい。多くの女性ファンは、奈々に自分を重ね、物語に浸るのだろう。

 恋する男に「依存」するばかりで、いざ男を失うと、「自分の居場所」を求め、途方に暮れる奈々。彼女には、「自立」したナナはまぶしくきらめく存在だ。だが一見強く見えるナナが隠した弱さ、心の傷、運命的な悲恋が次第に明らかになってゆく…。

 「意地ばっかり張ってると幸せが逃げちゃうよ」。突っ張って生きるナナに、奈々がさりげなく掛けた言葉が響いたりもする。弱そうな奈々が、案外しんは強く、互いに違うからこそ、二人は寄り添い、支え合えるのだ。その友情はどこか恋のようでもある。

 “歌姫”中島のナナはまさにハマリ役。携帯電話をマイク代わりに、ナナが歌うシーンは印象深い名場面だ。奈々演じる宮崎も、さすが演技派。脇役たちもみなユニークで、独特のオーラを放って魅力的だ。ただ、意外に演奏場面が少なく、音楽映画としてはやや物足りなさも残る。続編では、よりパワフルではじけたナナのライブシーンをもっと長く見てみたい。三日公開。(堀井正純)

〈ストーリー〉 ロックミュージシャンとしての成功を夢見て、一途に生きるクールな大崎ナナ(中島美嘉)。恋愛第一でミーハーだけど明るく天真らんまんな女の子、小松奈々(宮崎あおい)。同じ名で、同じ二十歳だが、育ちも性格も正反対の二人が偶然、上京中の列車内で出会い、東京で一緒に暮らし始めることになる。

 大都会での新生活。恋に生きる奈々だったが、やがて彼氏との仲はぎくしゃく。一方、ナナは東京で昔の仲間や新しいメンバーとバンド活動を再開する。自らについてはほとんど語らぬナナだったが、彼女の意外な過去を知った奈々はある行動に出て…。一時間五十四分。

 

HOME ・ 映画TOP

Copyright(C) 2005 The Kobe Shimbun All Rights Reserved