築地魚河岸三代目 (2008/06/27)

「味」求める人情喜劇

 「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」に続き、松竹が放つ新シリーズの第一作。約九百の水産、青果の仲卸業者が集まる「日本の台所」東京・築地を舞台にした、老若男女が楽しめる人情喜劇だ。

 商社で働く旬太郎(大沢たかお)は、ひょんなことから恋人(田中麗奈)の実家である築地の名店「魚辰」で働くことになる。だが食のプロを相手に悪戦苦闘。お薦めを聞かれても答えられないふがいなさを恥じ、毎日自腹で鮮魚を買って味の勉強を始めるが―。

 修業を重ねる旬太郎が、先代(伊東四朗)に跡継ぎとして認められるのかが、シリーズのテーマ。旬太郎が実は美食家で、繊細な味の違いを見分けられる舌を持つ、という設定が面白い。包丁の入れ方ひとつで刺し身の味が変わることを見抜き、魚辰の社員すらも驚かせる描写は最たるものだ。

 築地の魅力に取りつかれる元サラリーマンの姿を生き生きと演じる大沢。前二シリーズの渥美清、西田敏行と三國連太郎にどこまで迫れるか。

 伊原剛志やマギー、柄本明ら個性豊かな共演者も魅力的だ。顔見せの意味合いが強い第一作ながら、築地独特のしきたりや人間模様も描き込まれており、手堅い滑り出しといえる。

 よし、これだけ褒めておけば大丈夫だろう。ここからは少し苦言を。

 本作では当然、魚も重要なアイテム。刺し身や漬け丼など数多くの魚料理が物語を彩る。しかしどうしたことか、これらの料理が全くおいしそうに見えないのだ。

 例えばアカムツの煮付け。一口食べて「ん、うまい!」と旬太郎は顔を輝かせるが、食卓は逆光で薄暗く、寄りの映像も少ないので肝心の料理がよく見えない。

 「男は―」「釣りバカ―」同様に長く続くだろうシリーズ。ぜひとも次作ではセリフで「うまい」と言うだけでなく、映像でも「うまそう」と思わせてほしい。一時間五十六分。神戸国際松竹などで公開中。

(黒川裕生)

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