20世紀少年 (2008/09/05)

原作に忠実な大作

 原作ファンは驚くのではないか。キャラクター(俳優)のたたずまいから映像の構図、そして話の展開に至るまで、ことごとく「漫画通り」であることに。全三部作、制作費六十億円という邦画としては史上空前の規模での実写映画化プロジェクト。堤幸彦監督は「原作の完全コピー」に徹することにしたようだ。

  単行本の売り上げが累計二千万部を超える漫画家浦沢直樹の大ヒット作。一九六〇(昭和三十五)年生まれの浦沢が、アポロ十一号の月面着陸や大阪万博など、自身の幼少期から思春期を彩った甘美な記憶を存分に詰め込んだ「本格科学冒険漫画」である。

  九七年、日本では「ともだち」と呼ばれる教祖が率いるカルト教団が台頭し、海外では人間が突然全身の血を噴き出して死ぬという謎の事件が相次いでいる。ケンヂ(唐沢寿明)は失跡した姉キリコ(黒木瞳)の一人娘カンナを育てながら、実家のコンビニを手伝うさえない毎日。だが怪しい出来事の数々が、自分が子どものころ作った「よげんの書」の内容に酷似していることを知らされたことから、状況が一変する―。

  映画会社のみならず、関連する出版社や新聞社、テレビ局などが総力を挙げた企画。唐沢、黒木をはじめ豊川悦司や常盤貴子といった名だたる主要キャストは、全三作で約三百人にも上るというから尋常ではない。一作目には、浦沢自らが脚本にもかかわるという力の入れようだ。

  本作に失敗は許されない。リスクを避けるには「原作を忠実に再現」するしかなかったのだろう。下手に自分の色を出すと大けがをしかねないからだ。その意味で、本作の選んだ路線は正解といえる。多くの原作ファンも少なくとも失望はすまい。

  ただ、個人的には映画ならではの冒険があってもよかったのではないか、と思う。

  二時間二十二分。OSシネマズミント神戸などで公開中。

(黒川裕生)

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